研究分担者 |
内藤 正典 一橋大学, 社会学部, 専任講師 (10155640)
栗原 尚子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (80017623)
清水 廣一郎 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00015380)
中村 喜和 一橋大学, 社会学部, 教授 (40012356)
渡辺 金一 一橋大学, 経済学部, 教授 (50017513)
|
研究概要 |
イタリア, スペイン, レバノン, エジプト, シリア, ギリシャに関して, 過去および現在において都市が地域形成においてはたす役割が研究会において報告された. とくに沿岸都市が重層的な地域秩序形成において, 沿岸部に結節構造を与えるのみでなく, 高次の財貨, サービスの提供を通じて, 内陸部とそのヒンターランドに編成していく過程が報造された. 沿岸都市は必ずしもその港湾機能によってではなく, 行政中心, 具体的な農業地帯の市場中心, 近代工業の立地点として内陸部との関連をふかめており, 交通・輸送および情報伝達手段の発達によりこの傾向はますます強くなってきている. 都市ネットワークという観点からすれば, 国による事情の相異が大きい. これは南ヨーロッパ諸国のように, 国民統合の歴史が長い国と西アジアのようにその歴史が数十年にすぎないという事情の相違のみでなく, 地域主義の伝統, 地方における政治過程のあり方などにもよっていることがいくつかの報告から明らかになった. 歴史学的観点からの研究としては, 巡礼者の行動, 遠隔地交易が, それぞれ沿岸部と内陸部との交渉においてはたした役割がイタリア,スペイン,ギリシャ,パレスチナなどの事例から報告された. とくに巡礼者の行動を近代における観光客の行動とともに統一的に理解する視点が必要なことが明らかになったが, このためには, さらに理論的研究と実証的研究をつみかさねなければならない. 昭和62年度においては計10回の研究会を東京で開催し, 約250点の資料を購入した. 以上の諸点について, さらに討論をふかめ, 購入した資料を検討することが次年度の課題になる.
|