研究概要 |
今年度昭和62年度の研究目的である基礎的研究は大方達成されたといえる. 但し, 「郡是,市町村是」「産業調査書」を中心とする文献資料による新潟県の社会生活の歴史的変遷の研究に関しては, 充分に時間をさくことが出来ず, 来年度昭和63年度の課題とした. 高齢者のききとり調査は, 当該地域を6地区(佐辺,新潟市町, 新潟市平場農村, 北魚沼, 南魚沼, 中魚沼)に分類し, 75歳以上の男女各々1地区5名計30名に対し実施された. 更に, ききとり調査と並行して「新潟県における食べ物の変遷」と題する簡単なアンケート(6頁)も実施した. ききとり調査のほんの初期的結果からみて, 都会人と比較して単一性の強いと思われる新潟人の生活様式も, 詳細にみると多様性に富むことがわかる. 例えば食生活では, 主食(玄米, 五分づき, 七分づき, 白米, くず米, かて飯, そば, うどん, そはがき, 餅, 麦)かて飯の種類, 毎日のよりに食べたおかずの各々に関して幅広い多様性がみられる. また, 村(町)の行事にも実に数多くの項目が見られる. (例えば, 正月, 小正月, 二十日正月, 豆撒き, ひな祭, 端午の節句, 田植え, 七タ, 夏祭り, お盆,十五夜, 彼岸(春, 秋), 庚申祭, 大師講, 神送り, えびす講, 年夜など. )それは, 都会(東京都世田谷区)と農村(新潟県南魚沼郡)の三世代の日本人を通じて見られた日本の社会生活構造の二重性(熊台, 1987)のみならず, 新潟の住民の社会生活の中にも二重構造が存在する可能性を示唆するものといえる. それは, 本研究の目的とする地域社会を歴史的かつ総合的に分析し, それを他の地域ならびに日本全体との係りの中で把える事を可能にするという趣旨に合致するものである. それは, 本研究の当該地域の将来の総合的社会システム構築への施策となるものと考えられるといえる.
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