研究分担者 |
宮武 昭 中央大学, 文学部, 助教授 (70004091)
丸山 圭三郎 中央大学, 文学部, 教授 (00055120)
福田 宏年 中央大学, 文学部, 教授 (30055040)
平城 照介 中央大学, 文学部, 教授 (00055013)
阪口 修平 中央大学, 文学部, 教授 (50096111)
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研究概要 |
本年度第一回の妙高高原集会においては, 「時間意識の多様性」という点で共通の問題意識を確定した. 第二回の大阪集会においては, その多様性の見取り図を画定すべく討論が展開された. 以下に本年度の研究集会での成果の概要を記す. 1.「時間意識の多様性」とはとりあえず近代ヨーロッパでの自然科学的時間概念への異議申し立てを意味しているが, その意味を確認するためにも当該の時間概念を同定しておく必要がある. そこで, 物理学出身の野家氏にヨーロッパの時間概念の変遷を講述していただいた. 2.そうした変遷を念頭に置きながら宮武がカントの時間概念を『純粋理性批判』に即して検討した. 構造的にはニュートンと変わらぬカントの時間概念も認識論的には革命的なものであって, そうした時間意識が西欧哲学の真理概念に及ぼす影響を論じた. 荒川報告においては, 産業革命における労働時間の意味とニュートン的な均質な時間という着想との関連が指摘された. 3.こうした時間概念に対するアンチテーゼに注目したのが木田と福田の報告であった. 木田はキェルケゴールからニーチェを経てハイデガーに及ぶ反ニュートン的な時間意識に注意を促し, 福田は前世紀から今世紀に至る表現主義の文学作品に即して同様にテーマを展開した. 4.他方, 歴史学の分野では, そのような時間意識の成立以前の時代としてヨーロッパ中世を検討の徂上にのせたのか平城報告であった. ニュートン的時間とはおよそ縁遠い中世農民の時間意識が史料に即して報告された. 近代におけるニュートン的時間概念の社会的浸透を例証したのが阪口報告である. 近代ドイツにおける教育制度を取り上げて, 社会史の観点から綿密な検討を加えたものであった. 以上が本年度の研究実績の概要であるが, ここに欠けているのはヨーロッパ以外の地域との比較研究である. 次年度はその欠を補うべく, しかるべき専門家の助言を仰ぐことにしたい.
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