研究概要 |
1.様式研究の方法の整備. 研究代表者大宮誠は, アメリカ, ニューヨーク大学ヤン・ラルー教授と共同して, 音楽作品の様式研究の組織的方法を整備し, 日本で最初の綜合的様式写析の方法と範例に関する単行本を著述した. 同書に述べられている研究方法は, 様式的転換的にある作品に適用した場合とくに効果的である. (「スタイル・アナリシス綜合的様式分析 方法と範例」) 2.ハイドン研究. 大宮誠は, ハイドン初期(1760年前後)の管楽ディヴェルティメントの楽譜の校討をおこなった. 資料の比較検討の段階を終了し, 次年度には校討報告書を作製し, ドイツで出版する予定である. 3.ドメニコ・スカルラッティ. 共同研究者原田宏司は, スカルラッティの楽譜資料の研究をおこなった. (1) 日本の南葵音楽文庫が所蔵するスカルラッティの稀少な印刷譜を, 同時代の他の印刷譜と比較検討し, 特徴を明らかにした. (「ドメーニコ・スカルラッティの印刷譜」) (2) ヨーロッパ各地の図書館から手稿譜約20種をマイクロフィルムで入手し, 他の手稿譜, 印刷譜と比較討し, 資料の伝承経路, 評価の研究をおこなった. (「ドメニコ・スカルラッティの鍵盤ソナタに関する資料の比較研究」) 次年度は様式研究をおこなう. 4.サンマルティーロ. 共同研究者河村譲二は,交響曲のパート譜からスコアを作製し,様式研究の資料を整備した. 次いでソナタ形式による第1楽章の展開部と再現部の構造モデルを抽出した. (「サンマルティーニの展開部」) 次年度は, 両者の構造を様式的に比較検討し, 再現部についての論文を執筆する.
|