研究概要 |
計画調書(62年度新規)において要求した予算, 研究期間に大巾な削減があったので, それに即した研究計画と方法に変更した. 即ち, 遺品の組成を基に, 現代の形式の〓とルツボを使用し, 融解実験を行った. 1薩摩切子の化学成分 鹿島晃久氏所蔵の赤被せ切子鉢の破損部分から一片をゆずり受け化学分析を行った. 結果は次の通りである. 化学分析の結果は酸化物の形で表現する. 無色部分は酸化鉛(PbO)44.6%, 酸化亜鉛(2nO)0.31%酸化鉄(Fe_2O_3)0.03%, 酸化カリウム(K_2)10.6%を含むカリ鉛ガラスである. 赤色部分は酸化鉛(PbO)43.7%, 酸化亜鉛(2no)0.32%, 酸化鉄(Fe_2O_3)0.03%, 酸化カリウム(K_2O)10.1%, 酸化銅(CuO)0.28%, 酸化錫(SnO)0.06%を含む赤色ガラスは無色ガラスに銅と錫を加えて作った銅赤ガラスである. 2融解実験 次に以上の結果に基づいて原料を調合し, 無色ガラスと赤色ガラスを融解し, 更にコバルト, 鉄などを着色剤とする紺色ガラスをも融解した. これは銅赤ガラスは徐冷, 再加熱中に発色するため, 着色の失敗のおそれがあるが, 紺色ガラスは着色剤を混合すれば直ちに発色し, 失敗がないからである. 融解してできた無色ガラスに銅赤ガラスと紺色ガラスを被せ小皿, 碗等を製作した. 製作されたガラスについても化学分析を行ったが, ほぼ調合で予想した通りの成分を有していた. 但し, 赤色部分は酸化銅(CuO)0.18%と予想より小さく, 着色もやや期待よりも淡色となったがこの原因の探究は次年度の課題である.
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