研究課題/領域番号 |
62301012
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研究機関 | 東京国立文化財研究所 |
研究代表者 |
中里 壽克 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (20000458)
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研究分担者 |
三宅 久雄 東京国立文化財研究所, 美術部, 室長 (10174145)
浅井 和春 東京国立博物館, 学芸部, 主任研究官 (60132700)
山崎 隆之 愛知県立芸術大学, 美術学部, 助教授 (60015279)
石川 陸郎 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (30000459)
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キーワード | 漆木屎 / 漆下地 / 脱活乾漆 / 木心乾漆 / 麦漆 / 椨 |
研究概要 |
本年度は下記の仏像を調査した。勝常寺(福島県)本尊、能満寺(福島県)菩薩像、脱乾漆像断片十点(東芸大)、東寺講堂諸像、同寺兜跡毘沙門天、清涼寺釈迦像、棲霞寺三尊、神護寺五大虚空蔵、観智院五大虚空蔵、大阪市美術館田万コレクション、奈良博野田コレクション、京博蔵法華寺菩薩髻、同寺本尊頭部断片、庄部落木心乾漆像(香川県)、岡寺義淵像、等。 調査と並行して漆木屎のテストピースの製作も行った。古代漆木屎の観察の結果では、漆による木屎と思われるものも在ったが、色相が淡白で漆の混和が疑問視されるものも多く、その様な状態の相異を考慮して幾つかのテストピースを製作した。混和する材料としては朽木、ノコギリくず、椨葉、椨樹皮、等が考えられた。これらを用いて実際に漆木屎を造ったみると、ノコギリ屑は形体が大方正方形となり、この様な形状を古代の漆木屎の内にはまったく見出だされていない。朽木と椨はその点有望で、特に椨はこれ自体を熱湯で練上げるとかなり粘着力が出て、膠着剤なしでそのまま、盛上げることが出来、質感や色相も古代漆木屎に似ていると思われた。古代漆木屎にほぼ例外なく見出される細長形の木粉は、椨粉にも含まれている。 今日まで漠然と感じていた疑問-古代の漆木屎がはたして漆を主剤とする造形材料であったのかについては、なおはっきりと否定的な見解に近ずくことになった。布着せについても同様であり、古代漆芸の下地工程のかなりの部分は、漆ではなく他の膠着剤によって施工が進められたのではないかと考えられるに至った。
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