研究概要 |
本研究は農業後継者問題を「家」・「村」研究の一環として位置づけるとともに, 「農業」・「農家」・「農村」という三側面における後継者問題を実証的方法によって構造的に把握し, それぞれの諸相の分析と課題を提示することにあった. 本年度の調査において確認できたこととしては, 1.「農業」の後継問題では, 30才代のオペレーターに支えられ, 彼等が農業労働を担っているかぎりでは地域農業(農作業共同・請負・経営請負等)において問題は顕在化していない. 2.しかし, いわゆる「農地流動化」政策下にあって基幹労働力となる20才, 30才代の農外流出が多い地域では将来地域農業における後継問題は一層深刻化してくると考えられる. 3.つまり, 「農業」の後継問題においては, 現在「個別経営」と「共同経営」が同時進行している過程で共同化志向が先行しており, 農業労働力構成が問題になる 4.「農家」の後継問題としては, 「家」の後継と「農家経営」の後継という二つの側面が問題になる. 5.農家後継の日本的特質として, 「家」の後継と「農家経営」の後継は相続慣行を媒介として未分化である. 6.また言うまでもなく制度としての「家」は崩壊したが, 老親の扶養など農家生活の場においては「家」は依然として重要な課題を内包している. 7.したがって理論的には両者を弁別して分析しなければならないが, 「家」と「農家経営」が未分離の状態であるところに後継問題の鍵がある. 8.「農村」の後継問題としては, とくに過疎山村地域においては, 「家」の解体過程の進化により農林業の継承問題から親の扶養問題に焦点が移行してきている. 9.しかも, あとつぎ層が流出している場合は老親の離村に結びつく状況にある. 10.農家継承, 老親扶養問題と地域農業の後継問題は密接な関連があり, その構造関連的分析の重要性が確認された.
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