研究概要 |
長野県佐久郡における近世初期から現在に至る村落と同族団の史的変遷を実証的に解明するために, 主として3つの側面からアプローチした. I.実証的分析のひとつとして, 南佐久郡小海町本間村の篠原泉家を中心にして保存されている家・同族・村落に関する近世及び近代史資料を蒐集し複写した. そして, それぞれの史資料について統計・整理作業を行った(未完了) また, 本間村の主要な同族団について, 宗門帳等から家系譜や持高等を明らかにすると同時に, 各家を個別訪門して, 家系譜の確認及び同族団にかかわる諸慣行等について面接調査を行った. II.いまひとつの調査対象としては佐久市今井村を対象に選定した. その理由は, 上記の小海町本間村が南佐久郡に位置し, 同族団的結合が比較的強固であるのに対し, 佐久市今井村が北佐久郡に属し, この地帯では珍しく同族的結合が早くから解体傾向を示しているからであるが,同時に今井村の雫田寛治氏宅には宗門人別帳をはじめ多くの近世史料が保存されているからである. 史資料の複写は, ほぼ3分の2程度行ったし, 雫田氏の同族系譜に関しては分析を行ったが, 予定している作業の多くは未完了である. III.上記2村落の史資料では限界があり, 標記のテーマについて全体像を明らかにしえないため, 長野県史に収められた近世資料編全18巻をはじめ,近代史料・民俗編等から関係史資料を数多く選定し, その複写と問題別の編集を行って補完史料として用いる準備を完了した.
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