研究概要 |
今年度は, 西洋文化との対比を念頭において, 日本の文化・集団・組織等の特質に関する検討を集中的におこなった. 前半は, 大蔵省印刷局の「リフトノミックス・シリーズ」をとりあげ, その批判的検討をおこなった. とりあげた文献は数冊に及ぶので, 各巻によりその内容は異なり, それ故まだ批判点も違うのだけれど, およその共同点は, 各編が西洋近代思想の源流ともいえよアトム的把握からの暁却を目指し, 生物学的な全体と個との融合思想ともいうべきホロン概念, あるいは植物の根になぞらえたリゾーム編を中心に展開されている. しかし, 我々の研究では, かかる概念がかなりあいまいであり, ご〓合主義的に組立てられていること, ソフト化という〓〓なひびきが, 現代社会の影の部分とみえにくくするとヂオロギー的免除性を持っていること, さらには本シリーズ全体に, 具体的な生活査視の発想よりは, かなり抽象的な王侖生活といった生命植物論的見方に論点がスリかえられていること等を明らかにしてきた. 勿論, 本シリーズは学ぶべき点も多く含んでいるのだけれど, このシリーズには今なお体系的な批判を加えた書物が少ないと思われたのでわれわれはこのような視点に出意しつつ, 今後は独自の理論構築へ向かっていきたい. 後年は, 日本的集団編・経営論についての批判的検討をおこなった. そこでは「個人主義」や「日本的イエ社会編」に関するものが主であるが, ここでも「個人主義」と概念のあいまいさ, イエ社会編では, 平安末期に集口乱上国が形成したといわれるこの主体に, ウェーバーの「プロ倫」にも比するような, すべての日本的イエなり文化の原型を求めていいのか等を中心に批判点をまとめつつある. 次年度では, 本年度のこれらの批判点をふまえて, 我々独自の日本文化論の展開に向かって研究を進めていきたいと思っている.
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