研究概要 |
代表者が昨年8月まで5か月余, 世界の現状を把握するため, 早稲田大学在外研究員として出張し, 海外の情報を集めた. 慨してヨーロッパは盲学生の大学教育は古くから行われていたが, 現状は, 日本のそれとあまり変らなかった. スエーデン, ドイツ, イギリスには肢体不自由学生教育の歴史もいくらかあった. イギリスには小さいながらも, 障害学生がはじめたNational Bureau for Handicapped Studentsがあり, 国の援助の下に機関紙も発行していた. 歴史の先端を歩んでいる米国には, 各大学に障害学生を支える組織があり, そのほとんどの中心に障害者がいた. AHSSPPE, (National Conference,Association for Handicapped Students Service Providers)は今年第10回大会を盛大に行った. 障害学生のほぼ半数が学習障害者であることは米国の特長であった. この旅で各国の専門家と確認し合ったことは, 「世界中の知見を集めて取り組まねばならない研究課題は, 重度聴覚障害者・脳性マヒ者のコミュニケーション障害問題で, 他の問題は互いに情報を交換し合い, 社会の理解を求めることでかなり解消され得る」ということであった. 9月に入ってから全体会を開催し, 意見交換を行ない, 昭和64年3月末日までに報告書をまとめることを目標に研究活動を開始した. まず日本の現状把握のため, 障害学生, ボランティア等と密接に連絡を取りながら, 過去5年間の障害(視覚障害・聴覚障害・肢体不自由障害)学生の学生生活を具体的に調査することにし, その調査用紙作成・対象者名簿作りを行ってきた. 第2は障害学生を支える各大学の組織, その現状をさぐりつつある. 第3は早稲田大学の障害学生教育の歴史を, 大正時代学生だった岩橋武夫から, 学友の寿岳文章, 日本点字図書館長本間一夫等を介して調査を開始した. その他, 海外事情をまとめるために海外の専門家に原稿依頼をしたりした.
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