研究概要 |
前後18回にわたる研究会及び各研究分担者の調査・資料収集分析にもとづいた研究実績の概要は下記の通りである. (1)日本文化の定義と概念についての研究:日本文化の"普遍性と特殊性"を考える場合の前提となる"日本文化"の定義については,固定的・実態的なものと,相対的・抽象的なものとが考えられるが,国際化現象の著るしい現今の日本文化のありようを捉えるためには前者の定義を念頭におきながらも,後者の立場で考えていくことが望ましい. (2)先行研究の整理分析と問題の所在の確認:日本文化に関する先行研究はいうまでもなく数多く存在する. しかし,これが世界の諸文化との関係で,どのような"普遍性"をもちまたどのような意味で"特殊性"をもつかを体系的論じた先行研究は稀である. 日本経済の進出との関連で,日本的経営や技術の普遍性についての散発的研究があり,他方,ジャポニズム(日本趣味)やジャパネスク(日本的様式)的視点にたって,日本の芸術・美術を中心とした他文化への影響についての論考がみられる. 日本文化の"特殊性"については,その「集団性」「甘えの構造」「タテ社会」といった特色を捉えて同質性を突出させるよりも,多〓性を考え,固定化され閉ざされたシステムとしてよりも,開かれたダイナミックなシステムとしての視点を導入しようとする方向が強く打ちだされた. (3)国別事例の研究:アメリカ,カナダ,ブラジル,中国,台湾,タイ,フランス,フィリピンにおける日本文化の伝播・受容・変容について各研究分担者が中間的報告をおこなった. 日本文化の普遍性と特殊性の視点からその実態について興味ある考察がなされた. (4)文化項目別事例研究:国別事例研究によって得られた資料を,言語,文学,音楽,芸能,宗教,価値観,技術,食物,社会組織の9項目について,それぞれその伝播,受容,変容のプロセスを分析しているが,未だ結論を得ていない.
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