研究課題
総合研究(A)
この研究は、中国辺境社会にかかわる様々な問題について、各時代、各地域の具体的な事例をもとに考察したものである。したがって、時代は春秋時代(B・C4-5世紀)から清末(19世紀)に及び、地域は江蘇省、浙江省(B・C4-5世紀)、遼寧省(B・C2-A・D3世紀)、甘粛省・ウイグル自治区(B・C2-A・D7世紀)、福建省(3-6世紀)、広東省(6・19世紀)、山東省(13世紀)、雲南省(14-17世紀)、朝鮮に及んでいる。本研究によって明らかとなったのは、主に以下の諸点である。1.春秋時代に呉・越が興起した原因の1つとして、中原の経済が活性化し、これが呉・越に刺激を与えたことをあげられる。また『越絶書』が作られた原因の1つとして、中央の文化に対して辺境地方の人々が自覚的に地方性を強調しようとしたこと、をあげることができる。2.魏晋の時代に、遼西、遼東地方は中央へ対抗しうる力を蓄える。これは、中央が地方へ及ぼす統制力を弱めるとともに、周辺民族の侵入を防ぐためにはこの地方で自立化がはかられたためである。3.嶺南の欧陽氏は、南海貿易による利益をもとに、辺境社会にあって文人や学術(仏教)を保護した。4.唐代では、金銀は中国と外国との接点である辺境社会で特に重要視されていた。5.ウォーラーステインが唱えた「辺境化」の概念は、中国の近代を把握するうえでも有益であるが、バスーが唱えた「ピジン化」論は、さらに検討を加え、内容を豊かにすることができる。以上のように、中国辺境社会の具体像が明らかとなった。これらの成果は、辺境社会が中国史のなかで飛躍的に重要となるメカニズムをさらに研究するための、基礎資料となるであろう。
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