研究課題
最終年度であるため、各グループ・各人の研究を相互に比較検討しつつ、まとめを行った。1.古代史グループでは伊藤が法制史上の論点を整理し、桜井が女性とりわけ妻の立場について焦点をあてた考察を行いそれによって反映された家族観にせまった。そして本村は、ローマ期の家族像の変換を扱った。2.中世史グループでは城戸が法制面から、家産を中心とする家集団の成立をまとめ、樺山がカペー家という家産集団(国王家政)のもつ経営体としての多様性と特異性を指摘し、新井は、中小地主層の家系集団の行動原理とその実態にみられる差異との関係につき、結婚を視角としてさぐった。3.近・現代史グループでは、家族集団の類型の問題について北村と永原が整理を行い、家族史と政治文の接点をさぐって、近藤と二宮と坂井がそれぞれに分析を行った。また現代家族像の変化を福井は指摘し、それらをとりあげる側の視点の変化と家族論の問題を北村は扱っている。4.通時的にはとりわけイギリスを対象とし、家産集団の成立から、その下位集団である中小貴族への派及と変化、さらには近世の党派集団の問題までを通して議論することが可能となった。また全体における共通の問題として、女性(妻)、結婚といったキータームが、社会各層の家族像の差異や変化をさぐるのに有効な装置であることがあらためて確認された。時代・地域を通じて、家族集団が、社会の全体耕三の中で政治的にあるいは文化的にその一部としての役割を常に担っており、その役割内容の変化はヨーロッパ社会の展開・変化を常に必ず反映したものであるという点で、家族史研究は重要な意味をもつという事が再確認された。
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