研究概要 |
「国家を民衆の視点からとらえ直す」というのが, 本研究の当初からの目標である. 研究の開始後, 研究分担者間で意見交換が進むにつれて, この問題にアプローチするには民衆の間の草の根的「帝国意識」を重視しなければならないのではないか, との知見が得られた. つまり, 「国家の統合論理」を考える際には「帝国の統合論理」をも視野に入れるべきではないか, という事である. さらに説明すれば, 非ヨーロッパ世界に対する政治的・経済的・社会的・文化的・思想的等の優越感をその本質とする「帝国意識」は, ヨーロッパ各近代国家の民衆の社会と思想に深く浸透し, この「帝国意識」こそがヨーロッパ各近代国家の社会的・思想的統合の大きな柱の一つだったのではないだろうか. このような知見を視野に入れて, 本年度(昭和62年度)既に次のような研究書・論文が発表(予定を含む)された. 富岡次郎『現代イギリスの移民労働者』,野田宣雄『教養市民層とナチズム』,松尾尊〓「米騒動鎮圧の出兵規模」.
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