研究分担者 |
石部 雅亮 大阪市立大学, 法学部, 教授 (90046970)
石井 紫郎 東京大学, 法学部, 教授 (00009797)
山田 欣吾 一橋大学, 経済学部, 教授 (70017523)
成瀬 治 東京大学, 文学部, 教授 (70011278)
小菅 芳太郎 北海道大学, 法学部, 教授 (00000654)
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研究概要 |
1. 合計2回の全体合宿研究会を行い, 下記のテーマに関する欧米の最新の研究状況の把握に努めた. (1)古代研究班=ギリシアとローマの裁判手続の比較研究(小菅). (2)中世研究班=Liber Augustalisについて(西川), ザワセン・シュピーゲルにおける相続法の位置(石川), 教会法の糾問手続と近世世俗国家における受容(和田). (3)近世・近代研究班=「公共」の観念について(成瀬), モルゲンベッサー「共和国法典論」(石部), 教会・公法学・国家ー初期カール・シュミットの公法学(和仁). 以上の報告等について全員で活発な討議を行った. 2. 報告と討議の結果, 本研究の中心概念ともいうべき「公共性」をめぐって, 以下の三つの問題点が明らかになってきた. 第一の問題点は, 公私の分別に関するものである. 前近代のヨーロッパでは公私は未分化であったと一般的にいわれているが, しかし近代とは違った意味でやはりこの分別は重要であった. 例えば, 刑罰および糾問手続の始まりが, ローマ皇帝の官僚あるいは教会聖職者の統制秩序を目的とするものであったこと, あるいはザワセン・シュピーゲルの「相続法規」が主として参審の権利=義務の担い手に関するものであったこと, などである. この関連で, 「公」の担い手, 具体的意味内容の特定の問題が改めて確認された. 第二の問題点は, 「公共」の場としての裁判に関する. 「国家」あるいは「国民」を定義する際に, 法=裁判あるいは参審権が用いられることが多いが, これに関連して国制構造と裁判あるいは法の在り方の関連の問題が提起された. 第三の問題点として, 古代の法文化の媒介者としての教会の役割が, 「公共の利益」と「教会の利益」あるいは刑罰といった具体的な問題において検討されることになった.
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