研究課題
今回の科学研究費補助金にかかわるわれわれの研究は、国家領域に関するわが国の国際法的実践の総合的研究を目指すものであるが、今年度においては、前年度の研究成果と若干の反省に基づき、引き続き綿密な討議と検討を重ねてきた。そもそも、今回の研究計画の基本方針は日本の国家領域にかかわる日本の国際法的実践を次の三分野にわたって調査・検討のうえ、整理することであったが、これは今年度の研究においても踏襲されている。1.立法・行政機関の行為(条約、政府声明、国会審議・応答、外交書簡等を掲載している各種刊行物などによる)2.司法機関の行為(内外の判例集などによる)3.学説(内外の概説書、専門書、雑誌論文などによる)上記の研究方針に従い、昭和63年度には6回の研究合宿等を行い、研究分担者から引き続きそれぞれの研究進捗状況についての報告を受け、全員で討議と分析を行ってきた。前年度ほぼ検討を完了した北方領土、竹島、尖閣諸島、沖縄・奄美、小笠原諸島、南極、日本の委任統治地域、新南・西沙諸島についてもなお重ねて慎重な検討を加えるとともに、千島、樺太、朝鮮、台湾、山東・遼東の租借地についても新たに調査・研究を進めた。最初の計画では各人が研究ノートを作成することになっていたが、個々の問題点はそれぞれの分担領域の中で指摘することにした。最終的には、各自の分担領域についての日本の実践、歴史的経緯、問題点などを整理したうえ、総論的に日本の領土の変遷についての一章を設けることにした。以上の成果は、今秋「国家領域(領土)-日本の国際法事例研究(3)」として出版の予定である。なお、来年度からも、引き続き、国家領域の空と海の部分についての研究を進めて行くことにしている。