研究課題
研究会は9回開催した。第1回は野林健が自著『保護貿易の政治力学』について報告し、鉄鋼問題についての分析法と所見とが他の事例にどれほど適合するかをめぐって討論した。第2回は宮里政玄が米国での現地調査に基づいて「アメリカの貿易政策決定におけるUSTRの役割」について報告。USTRは元来議会筋の国務省不信の産物、形式上の役割は大きいが、実際の役割は多分に政権内の人間関係によって決まることを強調した。第3回は山本満が1930年代初めの経済外交について現代のそれとを比較しつつ論じた。第4回は入江昭が米国の歴史学界とくにアメリカ歴史学会の動向について報告した。第5回は有賀貞が米国でベストセラーとなった『大国の興亡』について、古風な国際政治史論として批判的に紹介した。第6回は佐藤英夫が「米国の経済ナショナリズムと世界経済システムのゆくえ」と題して報告し、保護主義の増大について述べ、世界経済のゆくえとして相互浸透化とブロック化とがあることを指摘し、共同指導体制の方向にもっていく必要を力説した。第7回は臼井久和が戦後日本人の対米観について既存の調査資料をもとにして分析し、アメリカおよびアメリカ(人)についてはプラス・イメージが強いがそれとともにマイナス・イメージも相当にあること、日米安保についての支持は70年代後半に増大したことなどを指摘した。第8回は有賀貞が大統領選挙の結果について、NYT、CQWR、NJなどの調査結果を用いて報告し、共和党は連邦議会でも州議会でも劣勢であること、議会との強調は多分に議会ペースになる惧れがあることなどを述べた。第9回は長尾悟がアメリカにおける保護主義に抵抗する勢力の分析を紹介し日本の場合との比較、そのような勢力の国際的協力戦略を議論した。個々人の研究では宮里政玄、佐藤英夫、長尾悟、有賀貞の研究が進んでおり、次年度に成果についての出版計画が具体化している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)