研究概要 |
1.本年度の研究により得られた新たな知見と成果 (1)問題意識と分析の枠組:台湾経済発展のマクロ的パーフォマンスが, 他のアジアNICsに比べて特に優れているのはなぜか. その要因は,国際環境の条件がほぼ等しいとみるならば,これを内在的要因に求めるほかない. この点で,台湾における歴史的,社会的な商品経済の発展基盤の厚さが際立っている. 古くから商業的農業および農産加工品の対外貿易が発展した. その基盤の上に商人資本の蓄積が発達し,戦後の経済発展の基本的土台となっている. 戦後にみられる高度成長は,清末期,日本領有期についで,この一世紀来,三度目のものである. 同時に,それらが対外貿易に主導された発展である点においても共通している. したがって,発展の構造とメカニズムを分析する枠組として,つねにその外圧性と内発性,対外的循環と対内的循環の二つの側面をみきわめる複眼的視点を必要とする. (2)従来の研究に空白を埋めた部分:台湾経済において中小企業が著しく発展していること,またそれが輸出の主要な担い手になっていることについては,あまり知られていない. そして中小企業を支えている非制度金融の実態,このほか,台湾経済の特殊要因である華僑資本の性格についての研究が乏しい. 本年度は,この空白部分に焦点をあてて研究し一定の成果を収めた. 2,図書資料の集収状況 商工業センサス報告が非売品扱いにされているため,その集収方法に苦慮しているほかは,ほぼ所定計画の6割方を達成した. 残る4割は次年度の計画で引き続き集収を行う予定である. 3,研究会活動については,計画通り,合計4回(8日間)会合をもち,8つのテーマについて研究討論を行った.
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