研究分担者 |
応地 利明 京都大学, 文学部, 教授 (60024212)
小野 菊雄 九州大学, 教養部, 教授 (60038437)
中川 浩一 茨城大学, 教育学部, 教授 (60015930)
竹内 啓一 一橋大学, 社会学部, 教授 (00017617)
水津 一朗 奈良大学, 文学部, 教授 (40025028)
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研究概要 |
今年度行なった研究の成果は大きく二つに分けられる. 1)は中国・インド含めた日本伝来の土着的ともいえる地理思想に関するものであり,2)は西洋伝来の近代地理学思想に係わるものである. 1)に属するものとして,日本のオリジナルな景観の深層に,わが国伝来の地理思想の表現である「奥行」や「間」などを読み取ろうとする水津の研究. 同じく日本の古代の景観構成に道教的要素の存在を指摘する千田の研究を上げることができる. 竹内が取り上げた志賀重昴の国粋思想は日本の特徴的風景から抽出されたものであるが,かれの地理学の中にはすでに西欧欧の近代地理学思が入っている. 2)に属するものとして,久武は,わが国において1920年代から40年代にかけて,地理学の大きな潮流をなした景観地理学研究とアメリカ文化地理学の影響関係を探っている. また,地理学方法論と集落地理学に大きな業績を残した綿貫勇彦について,山野はヘットナー,シュリューターを始めとするドイツ地理学との関係を明らかにした. 西欧地理学の日本地理学への影響関係を問題にする場合,西欧地理学自体の発達にも充分目を注いでおかなければならない. 第二次大戦前のドイツにおける「民族ドイツ学術振興会」において果してきた地理学の役割を追究する山本の研究, また栗原のマドリッド地理学協会とヨーロッパ地理学界の影響関係は日本の地理学の形成,発達を探る上で参考となろう. フランスのヴィダル地理学の日本での評価が正当であったかどうかが,野澤によって追究されている. さらに中川による明治年間の中等学校の地理教師の出身母体をめぐる問題や千口の西欧のツーリズムの思想の日本的変容の問題は日本の地理(学)思想の発達を教育,民衆から捉えるという視点を提供してくれる.
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