研究課題/領域番号 |
62301091
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野澤 秀樹 九州大学, 文学部, 教授 (00036998)
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研究分担者 |
千田 稔 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (20079403)
小野 菊雄 九州大学, 教養部, 教授 (60038437)
中川 浩一 茨城大学, 教育学部, 教授 (60015930)
竹内 啓一 一橋大学, 社会学部, 教授 (00017617)
水津 一朗 奈良大学, 文学部, 教授 (40025028)
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キーワード | お雇い外国人教師 / 札幌農学校 / 新渡戸稲造 / 志賀重昴 / ナショナリズム / 小田内通敏 / 文化地理学 / ヒューマニスチック地理学 |
研究概要 |
今年度はもっぱら幕末以降いかに欧米の地理学がわが国にもたらされ、わが国の近代地理学の形成に影響を与えてきたかの検討に充てられた。まず幕末から明治初期にかけてお雇い外国人教師や日本人渡欧者によって西欧流の地理学がわが国に紹介されたのであるが、源はお雇い外国人の中で地理学を教えていた教師を特定し、使用されていたテキストの探究とその内容の検討を行い、これまで空白であった部分を埋める作業を行った。また当時欧米から海水浴法が伝えられたが、小口はこの受容過程を検討し、日本のツーリズムの黎明期の問題を明らかにした。これは広い意味の西欧と日本の地理思想の違いを浮き彫りにするものであった。明治期における西欧地理学の日本への紹介者として札幌農学校の存在を忘れることはできない。そこで学んだ新渡戸稲造・内村鑑三・志賀重昴らはアカデミズム地理学成立以前のわが国地理学に大きな影響を与えた人たちである。竹内はこれらの人物や福沢諭吉・内田正雄らを含めたいわゆる啓蒙思想家の地理学思想が日本の近代ナショナリズムと深く結びついていることを明らかにした。新渡戸の影響を強く受けた小田内通敏は日本の人文地理学の発達の上で大きな足跡を残した。中でも郷土地理研究を通して、戦前の日本のナショナリズムと結びつくところがあった。野澤は小田内のほか三沢勝衛、内田寛一の郷土地理について検討したが、三沢、内田は当時のイデオロギーからは無縁であった。明治末から大正初期にかけてわが国に地理学講座が創設され、アカデミズム地理学の時代を迎える。それとともに本格的な西欧の近代地理学の導入が見られるようになる。久武はシュリューターを始めとしたドイツ地理学やサウアーを中心としたアメリカ地理学が日本の文化地理学の発達に与えた影響について詳細に明らかにした。なお、山野は近年地理学思想に大きな位置をしめるヒューマニスチック地理学の文献整理をした。
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