研究概要 |
本年度は,当初の研究計画にしたがって,下記の2項目を中心に調査研究を行った. 1.わが国の教員養成大学・学部の自然科学および理科教育担当者を対象として,高等学校における理科諸科目の履修(必修・選択)がどのように考えられているかを調査した. 以下は,その結果の大要である. (1)高校生の適性・進路・能力などを考慮して,物理,化学,生物,地学の選択に履修に賛成する人が多い. (2)しかし,大学における自然諸科学の教授の実際的問題や,自然科学に関する国民的教養の質的水準の向上という立場に立って考えた場合は,物理,化学,生物,地学の選択的履修に反対する人が多い. これは上記(1)と矛盾する結果になっている. (3)理科諸科目の選択は,生徒の適性や能力に即応して行われるよりも,大学入試科目に左右されることが多く,この問題が多く指摘されている. 2.欧米諸国の中等学校における理科諸科目の履修状況について調査した. 欧米諸国,とりわけヨーロッパ諸国でも,中等学校における理科諸科目をどのように履修させるかが大きな問題になっており,国家的規模で問題への取り組みが行われている. しかし,生徒の適性や能力を考慮した場合,また,自然科学教育の深化をはかろうとする場合,選択制をとらざるを得ないが,そうすると自国科学に関する国民的教養という点で問題が生じるので,その対応策に腐心している. 本年度の研究成果の一部は,日本理科教育学会 第37回全国大会において「欧米諸国の中等教育段階における理科諸科目の選択制について」と題して発表したが,ここには本研究の中間報告としてその一部を本実績報告書に添付する.
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