研究課題/領域番号 |
62301095
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
武藤 三千夫 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (50015301)
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研究分担者 |
鹿島 享 国立音楽大学, 教授 (90050781)
水野 敬三郎 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (50015228)
山川 武 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (00015223)
稲次 敏郎 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (70015220)
角倉 一朗 東京芸術大学, 音楽学部, 教授 (80015263)
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キーワード | 作品 / 美的価値 / 歴史 / 解釈学 / 比較文化学 |
研究概要 |
前年度に続く「芸術と美的品質」をめぐる比較芸術学的研究の焦点を本年度も研究計画に照らして、(1)原理論的研究、さらに広く(2)文化学的地盤における特殊研究、(3)各芸術ジャンルにおける個別問題群の研究に絞り、それぞれの分野で理論的・歴史的・社会的・文化学的に研究を遂行した。その結果えられた新しい知見は次のとおりである。すなわちI.原理論的研究では、代表者武藤はヴィトゲンシュタインにならって、品質とは世界の構成に関わるものではないという意味で、特権的に美的かつ倫理的に機能するものであるが、にもかかわらずその客観性の基礎づけも可能であることを検証し、美的なものの実証的研究への道を開いた。次にII.比較文化学的研究では、稲次は主として会津地方における「街並み景観」を実証的に調査し、我国における環境の美的再活性化のための基礎づけを試み、松島は古代メソポタミア世界の宗教意識に根差した「神の婚礼式」や神像に関わる言説を手掛りにその具体的な美と品質を論じ、鹿島はいわゆる音楽図像学の立場から文化形成体としての楽器とそれが造形された美術とのそれぞれの美的品質を問題とし、井村は西洋近代の美的品質を保証する条件としての芸術の自律性の無効とポスト・モダンの問題を論じた。最後にIII.比較芸術学的個別研究では、角倉は西洋音楽の場合として、近代音楽学としての音楽理論の検討を通じて音楽的質の問題に迫り、永井は西洋美術の場合として、古代から作品価値を評価する基準としての品質論が常に存在することを実証し、美的品質とは近代的芸術諸学の相関者であると指摘し、山川は日本美術の場合として、江戸後期の二人の画家佐竹蓬平と鈴木芙蓉をとりあげその独自の南・北宗画の対立に美的品質の微妙な差異を実地調査し、水野は東洋美術の場合として、平安期の仏像(仁和寺阿弥陀三尊・二天像・円城寺不動明王)についてその様式と彩色表現との関わりを調査した。
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