研究課題
宇宙線の起源については、昨年度と同様に、その最有力候補である超新星爆発による加速起源を研究し、とくに、爆発初期の加速として考えられるパルサー加速の研究を、理論・実験を比較しながら行った。超新星1987Aが爆発した直後であるので、この滅多にない機会を活用しての研究が主であった。主として、研究会を行って、研究の成果を報告し検討することとして、昭和63年12月27日、28日の両日、「高エネルギー宇宙線の起源と組成」と題して、約70名で詳しい検討を行った。この報告集は近く出版される予定である。パルサーからの加速に関しては、観測的には、ニュージーランドで、日本とニュージーランドの共同実験を行っている佐藤文隆氏のグループから、ガンマ線のバーストを、昭和63年1月14日と15日に、観測した可能性が高いという報告があり、その物理的解釈をめぐって、種々の見解が示された。この観測は昭和63年12月から、平成元年2月まで、さらに継続され、装置が増強された成果が期待されることになる。また、理論的に、ショックによる加速について、シミュレーションでは、必ずしも、理想的なマイナス二乗則のスペクトルが出てこないことが計算で示唆され、大きな問題提起となった。また、10^<19>eV付近の加速機構として、活発な銀河のジェットが示唆されたことも、これまでにない成果であった。(高原の示唆)。宇宙線の組成については、10^<15>eV付近で、陽子が少いことが、乗鞍宇宙線観測所の結果からも示され、約20%程度と見積られた。これは、従来の富士、カンパラ山実験の結果よりもやゝ多いが、全体と比較して少ないことは共通であり、銀河による宇宙線の閉じ込めに、強い制限を与えることがわかった。以上、加速と組成について、着実な進歩が見られた。
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