超強磁場による電子制御の研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62302016
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 伊達 宗行 大阪大学, 理学部, 教授 (80028076)
• 研究分担者: 本河 光博 神戸大学, 理学部, 教授 (30028188) ; 三浦 登 東京大学, 物性研究所, 教授 (70010949) ; 仁科 雄一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90005851) ; 糟谷 忠雄 東北大学, 理学部, 教授 (30004245) ; 都 福仁 北海道大学, 理学部, 教授 (10000837)
• キーワード: 超強磁場 / 磁場誘起相転移 / 高温超伝導 / 重フェルミオン / 強磁場分光学 / 量子ホ-ル効果 / メタ磁性 / 強磁場磁性

研究概要

本年度は本研究費の最終年度であり、年度末には40名の参加を得て総合研究報告会を持った。この研究会で報告された数多くの成果の中から特に注目されるものを下に要約する。
1.ハルデンにより予想されたS=1スピンの持つ一次元物質にエネルギ-ギャップの存在することを磁化測定により確認した。また技術的に確認した。強磁場マイクロ波ESRによりこの物質の励起状態の共鳴が観測され、特異な角度依存やDが負であることが明らかにされた。
2.国内の各研究者が各施設の強磁場を用いて重フェルミオンや近藤効果で注目されるウラン化合物の物性研究を進め、多段のメタ磁性の観測等多くの成果が得られた。
3.酸化物超伝導体の研究が進展し、電子による超伝導物質NdCeCuO_4のHc_2や残留抵抗、薄膜の磁気抵抗測定あるいはYBaCuOの臨界電流特性の向上等に見るべきものがある。
4.Fe/Cr人工格子は磁場印加によりその抵抗値が大きく変化することが確認された。またFe/Gd超格子の描く特異な磁化曲線を理論的に解明することができた。
5.生体組織に対する磁場効果は古くからの課題であるが、不明確な部分が多かった。ここでは物理的に理解できる磁場配向の問題を理論的、実験的に検討し強磁場中での反磁性物質の振舞いを明らかにした。
6.技術的には強磁場マイクロ波ESRの確立と一巻コイルによる破壊型メガガウス磁場のパルス幅拡大の成功を挙げることができる。またU化合物等高導電率試料の増加により、いわゆるロングパルスマグネットの特性を活かした測定が数多く行なわれDyAgに見られるような多段のメタ磁性が見つけられている。

研究成果

• [文献書誌] K.Katsumata,H.Hori,T.Takeuchi,M.Date,A.Yamagishi and J.P.Renard: "MAGNETIZATION PROCESS OF AN S=1 LINEAR-CHAIN HEISENBERG ANTIFERROMAGNET" Phys.Rev.Lett.63. 86-88 (1989)
• [文献書誌] P.Morin,J.Rouchy,K.Yonenobu,A.Yamagishi and M.Date: "INTERPLAY OF ANTIFERRO MAGNETIC AND ANTIFERROQUADRUPOLAR INTERACTION IN DyAg AND OTHER RARE EARTH INTERMETALLIC COMPOUNDS" J.Mag.Mag.Mat.81. 247-258 (1989)
• [文献書誌] M.Date: "ADVANCES IN HIGH FIELD MAGNETISM AT OSAKA" Physica B. 155. 119-125 (1989)
• [文献書誌] T.Shigeoka,H.Fujii,K.Yonenobu,K.Sugiyama and M.Date: "High-Field Magnetization in PrCo_2Si_2 Single Crystals" J.Phys.Soc.Jpn.58. 394-397 (1989)
• [文献書誌] A.Yamagishi,T.Takeuchi,T.Higashi and M.Date: "Diamagnetic Orientation of Polymerized Molecules under High Magnetic Field" J.Phys.Soc.Jpn.57. 2280-2283 (1989)
• [文献書誌] M.Hikita,Y.Yajima,H.Fuke,K.Sugiyama,M.date and A.Yamagishi: "Magnetoresistance Measurements of Single-Crystal Ln Ba_2 Cu_3 Oy(Ln=Ho,Dy,Eu and Y)under Pulsed High Magnetic Field" J.Phys.Soc.Jpn.58. 2248-2251 (1989)