研究課題
大きな追波中を航行している船の復原力は波と船との相対位置に関係して変動し、船体中央が波の頂にあるとき、静水中のそれに比べて大幅に減少する。この復原力の減少量と船の転覆との運動力学的関係を調べるために、本年度は波長、波高及び船型が復原力減少に及ぼす影響を10種類の船型について調べ、その減少量が最大となる波長の追波中を航行している船のメタセンタ-高さGMと船速をパラネメ-タとして、船が転覆に至るまでの運動のシミュレ-ション計算を各船型について実施し、次の結果を得た。(1)船の長さと等しい波の頂に船体中央があるとき、その静水中の復原力に対する減少量は船のフリ-ボ-ドが小さく、船体前後のフレアが大きいU型船で大きく、V型船型で小さくなる傾向がある。(2)波長が船の長さと等しく、波高波長比が1/20の追波中でシミュレ-ション計算を実施した結果、メタセンタ-高さが小さくなる程、また船速が大きくなる程、船は転覆し易く、復原力減少の大きい船型が転覆し易い傾向がある。(3)特に船体についてはその前後のフレアの小さいV型船は追波に対して強いが、U型船では横波基準(A562)を満足している船でも追波中で転覆することがある。尚、本シミュレ-ション計算は没水部船体に働くフル-ド・クリロフ力、縦運動に関する田才の実用式、操縦運動に関する井上の実用式及び横揺に関するN係数を用いて行なった。
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