研究概要 |
材料照射研究における有力な研究手段である原子炉による照射は,これまでに大きな実績を上げてきたが,最近における材料照射研究の進展に伴ない,より精細な照射条件を制御することが望まれるようになってきた. よって,本研究では,現在の原子炉による照射条件や環境を検討して,それに関連する問題を指摘し,原子炉照射が一層材料照射研究に寄与するよう提案することを計画した. 本年度はアンケート調査,現地調査及び研究会開催などにより,まず照射設備としての原子炉の位置づけについて全般的な検討を行い,次に,具体的な問題点について,照射損傷組織,照射下及び照射後試験,照射技術の3つの視点から検討した. 原子炉での照射実験は各因子の制御の難しさと中性子スペクトル分布の広汎性などから,結果を明快に解釈するには多くの制約があるが,依然として材料照射研究の手段として有用性が高く,基礎及び応用にわたり今後各種の照射装置と相補的な関係を保ちつつ益々利用されるものと判断される. 照射損傷組織については,高温照射のとき従来のように,所定の温度に上るまえにかなりの中性子を受けるか,その温度に保持されてから中性子の照射を受けるかで,試料中に形成される欠陥組織が異なり,その影響がかなり照射後期まで及ぶものと想定される. また,損傷率の影響も大きいことが分った. 次に,照射下及び照射後試験では,照射下その場試験における課題,微小試験片による機械試験結果の評価方法の確立の重要性などが指摘された. また,照射技術では,中性子スペクトルの測定,照射温度の測定・制御,照射キャプセル・リグ等の照射器具の改良,などについて問題点の指摘や対応についての提案がなされた. 今後,これらの討論を深め,来年度は報告書をまとめる.
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