研究概要 |
1987年6月に全員による研究打合せ会を開き,南・北大東島における従来の研究,問題点につき討議し,今後の調査予定を検討した. 現地調査は8月に予備的な調査を,11月に本格的な調査を実施した. 本年度の調査地域である北大東島では,島のほぼ北東部の海水浴場付近および西端の西港の北の2か所を最重要調査地域として地形と化石サンゴの産状を精査し,全員で年代測定可能と思われる原地性および異地性のサンゴ化石を見出し,それらと地形との関係を現場で検討した後,2班にわかれ,試料の採取と記載および試料採取地点および地形の測量を光波距離計を用いて行なった. 海水浴場では海岸ぞいのノツチの下部ないし波食面から,西港の北では大東石灰岩をきる大きなわれめにみられるノツチやそれを埋める堆積物中から計30個の試料を採取した. これらの試料は同一サンプルを二分割して,ウラン系列法とESR法による年代を測定中である. 独立した方法により年代を得るため,両方法による測定を終了後,結果を照合することにしたので,年代値の公表は本年6月に全試料の年代測定を終了するまで控えることにする. しかし,海水溶場については,少なくとも6試料について最終間氷期最盛期とみなされるウラン系列事代が得られた. これらの試料の得られた高度は最高で海抜6.3mにすぎない. そうすると,試料採取地よりも高位に少なくとも4段のサンゴ礁段丘が旧礁湖をとりまいているので,北大東島が況水から離水に転じた時期は少なくとも数十万年前,おそらく約100万年前にさかのぼるものと推定される. また上記の6.3mという高度は,最終間氷期最盛期の推定6海面高度(1般に海抜5〜6mといわれている)に近く,このことは最終間氷期以後の隆起がきわめて小さかったことを示唆し,隆起速度一様性の仮説の再検討を要請するものである. 今後年代測定を續行するとともに,南大東島の調査を予定している.
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