研究概要 |
飛騨山地の花こう岩類の約40件の放射年代は次の3グループに大別される. すなわち, a)40〜110Ma, b)140〜210Ma, およびc)220〜260Maである. a)は白亜紀ないし古第三紀の花こう岩類の年代を示し, c)はジュラ紀の花こう岩類の年代を示すものであろう. c)はすべてジュラ紀花こう岩類中のジルコンをU-Th-Pb法によって測定した放射年代で, レリクト・エイジを示すものと思われる. 飛騨山地のジュラ紀花こう岩類の(斜長石)/(斜長石+カリ長石)容量比は岩体によって異なるが, 0〜0.65である. これに対し韓国のジュラ紀花こう岩類の同容量比は0〜0.5と, 韓国のジュラ紀花こう岩類は飛騨のジュラ紀花こう岩類より多少塩基性である. また, 飛騨の花こう岩類は主として磁鉄鉱系であるが, 韓国のジュラ紀花こう岩類は主としてチタン鉄鉱系で, 一部に磁鉄鉱系のもみられる. この違いは花こう岩類の起源物質の違いによるものと思われる. 飛騨の花こう岩類は打保, 流葉山, 船津ー下之本などの岩体で累帯構造を示す. 韓国のジュラ紀花こう岩類には累体構造を示す岩体はほとんど知られていない. むしろ, 韓国では花こう岩体の累帯構造は白亜紀の花こう岩類に特徴的なものとされている. 飛騨の花こう岩体の累帯構造にも, 周辺部が塩基性で, 中心部が酸性な岩石からなる, いわゆる正の累帯構造を示すものと, この逆の負の累体構造を示すものとがある. 前者の例は打保および船津ー下之本岩体で, 後者の例は流葉山岩体である. このような累帯構造の違いは累帯構造の成因の違いによるものである. 飛騨山地のジュラ紀花こう岩類の微量元素含有量は放射化分析によって分析済であるが, その解析は今後の問題である.
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