発酵乳の抗腫瘍活性とその利用に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62303016
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 足立 進 東北大学, 農学部, 教授 (10005580)
• 研究分担者: 大谷 元 信州大学, 農学部, 助教授 (30109201) ; 細野 明義 信州大学, 農学部, 教授 (20021074) ; 宮本 拓 岡山大学, 農学部, 助手 (00093708) ; 中江 利孝 岡山大学, 農学部, 教授 (40032974) ; 伊藤 敞敏 東北大学, 農学部, 助教授 (80005610)
• キーワード: 抗変異原性 / 変異原性 / 発酵乳 / 乳酸球菌 / 乳酸桿菌

研究概要

乳酸球菌Lactococcus lactis subs cremorisが優勢菌を占める北欧産粘質発酵乳の一種LangfilをSarcoma180およびLewris Lung carcinomaを接種着生させた担癌マウスに腹空内投与し、腫瘍の増大、転移病巣の数、生存日数などを測定したところ、対照乳に比較して明確な抗腫瘍活性がLangfilにあることが認められた。対照として用いたオートクレーブ加熱牛乳にも弱い抗腫瘍活性が見出されたが、Langfilのそれに比較すればいちじるしく低いものであった。
一方、Eschirichia coli B/r WP_2 tip^- her^-株に対する2-(2-furyl)-3-(5-nitro-2-furyl)acrylamide,4-nitroguinoline-1-oxideおよび犬、猫の糞から抽出した変異原性成分による変異原性が、Streptococeus faecalisを培養した発酵乳によっていちじるしく阻害されるばかりでなく、この菌株の洗浄菌体が高い抗変異原性をもつことが明らかとなった。とくにこの菌の細胞壁が変異の誘起の抑制に有効であることも見出された。このStreptococcus faecalisの細胞壁は、アミノ酸の培焼物による変異原性に対しても、有効性を示した。Streptococcus faecalisはインドネシヤの伝統的発酵乳"Dadhih"からも分離され、これらの地域の腫瘍発生の抑制に何らかの役割を演じてきた可能性が示唆された。
他方、種々の乳用乳酸菌の抗変異原性をスクリーニングして、Streptococcus faecalis,Lactococcus lactis sabsp,lactisに高い抗変異原性の認められることと、それとは反対にLacts bacillus delbrueckii subsp brolgaricusには抗変異原性がまったく認められないことを指摘した。これらの発酵乳の抗変異原性はカゼイン画分に分布し、ホエー画分には分布しないことも見出された。

研究成果

• [文献書誌] Haruki KITAZAWA,;Takahiro TOBA,;Takatoshi ITOH,;Susumu ADACHI,;Nobuko KUMANO,: Agricultural and Biological Chemistry. 52. 2331-2332 (1988)
• [文献書誌] Haruki KITAZAWA,;Takahiro TOBA,;Takatoshi ITOH,;Susumu ADACHI,;Nobuko KUMANO,: Milchwissenschaft. 42. 578-579 (1987)
• [文献書誌] Akiyoshi Hosono,;Atushi Yoshimura,;Hajeme Otani,: Neth.Milk Dairy J.41. 239-245 (1987)
• [文献書誌] Akiyoshi Hosono,;Kunigal N.;Shashikanth,;Hajeme Otani,: Journal of Dairy Research. 55. 435-442 (1988)
• [文献書誌] Akiyoshi Hosono,;Atushi Yoshimura,;Hajeme Otani,: Milchwissenschaft. 43. 168-169 (1988)
• [文献書誌] Akiyoshi Hosono,;Robertus Wardoji,;Hajeme Otani,: Faculty of Agriculture,Shinshu University,Ina. 399-45