化学科に在籍する4年生以上博士過程迄の学生院生約300名を対象に高校時代に受けた化学教育に関するアンケート調査を行った。進学校ほど大学入試問題を中心に授業が行なわれるケースが多い事がわかった。 大学入試問題が高校教育に多大な影響を与え、そのあるべき姿を歪めているのが現状である。 当研究会では化学・全国大学入試問題を分担して研究した結果、「法則名」を問うもの、「単なる計算問題」・クイズもどきの「穴埋め問題」・「瑣末な事柄」を問うもの等々好ましくないものが多いのに驚かされた。そのような問題を作らざるを得ない、大学側の様々な理由はあるであろうが、「考えたら負け」・「受検技術の習得」を目標として行う授業では学習指導要領に掲げた目的は達成されない。化学・大学入試問題の改善は第1優先順位で行なわれるべきであろう。以上の点を踏まえ昭和63年8月に「化学の大学入試問題を考える(中間報告)」を「化学と工業」に掲載することともに、9月29日には日本化学学会第57秋季期年会(仙台)に併設された「化学教育フォーラム」で分担者である戸嶋直樹氏が「高校化学と大学入試問題」と言う基調講演を行なった。これらの提言に対する反響は大きく、化学教育の改善に大きな力になるものと思われる。 この他には、指導要領の改訂に際し、改訂委員を交えて意見の交換を行なった。文部省の教科調査官とも教科書について懇談した。 教科書は負制限や価格制限があるので、充分な説明がなされていない嫌いがあるので当研究会では副読本を作る検討も始めている。 外国における試験問題としてINTERNATIONAL BACCALAUREATE やINTERNATIONAL CHEMISTRY OLYMPIADEの問題を入手して日本国内の入試問題と比較検討をしている。
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