研究分担者 |
川本 芳 名古屋大学, 農学部, 助手 (00177750)
山内 克典 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (30021322)
椿 宜高 名古屋大学, 農学部, 助手 (30108641)
山村 則男 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (70124815)
松田 博嗣 九州大学, 理学部, 教授 (10027336)
|
研究概要 |
今年度はアリ,社会性ハチ類,ウリミバエの野外調査,ならびに鳥の社会に見られるヘルパーとサル社会に見られる子殺しについての世界で得られた全データの収集と解析に重点を置いた. また専門をこえての共同研究を進めるため,何回か合宿を行い,野外調査のデータを出しあって数理生物学者をまじえて討議を行った. そのさいには野外における動物の生活を実地に見るための共同調査も実施した. これらの結果,サルの子殺しについてはオスの繁殖戦略であるとの説が最も妥当であると認められた. ただしこの説の弱点は子を殺されるメスがなぜ防衛しないかであった. そこで数学的モデルによる解析を行った結果,ある条件下では子殺しに低抗せず,子殺しの性質を持つ息子を産むことがメスにとっても適応度をあげることが判明した. しかしその条件は厳しく,一般にはむしろ子殺しに低抗することのリスク(メスのケガなど)が重要であると結論された. 鳥のヘルパーについては世界中のデータを集め, 日本でヘルパーが頻繁に見られるオナガなどとの比較検討を実施したが, 結論を得るにはなお研究が必要である. また沖縄のアリで, 同じコロニー内でオス同士が殺しあう種が何種も発見され, その比較検討が進みつつある. 日本の生態学者による戦後最大の発見の一つに,アブラムシにおける不妊の兵隊カストの発見がある. これについても全データの収集と比較検討が行われ,今後の研究上の問題点が明らかにされた. 昭和63年度は鳥のヘルパー,社会性昆虫の多雌創設,サルの母以外のメスによる保育など,協力の測面について突込んだ研究を行ない,昭和64年度には研究の成果をいくつかの理論的論文として発表する予定である.
|