研究課題/領域番号 |
62304002
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研究種目 |
総合研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生態学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 嘉昭 名古屋大学, 農学部, 教授 (50115531)
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研究分担者 |
川本 芳 名古屋大学, 農学部, 助手 (00177750)
椿 宜高 名古屋大学, 農学部, 助手 (30108641)
岩橋 統 琉球大学, 農学部, 助教授 (90128471)
山村 則男 佐賀医科大学, 医学, 助教授 (70124815)
松田 博嗣 九州大学, 理学部, 教授 (10027336)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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キーワード | 動物社会 / 協同繁殖 / 子殺し / 精子競争 / 進化的安定戦略 / 利他行為 / ハダニ / 狩りバチ |
研究概要 |
霊長類から昆虫までを扱う生態学者に数理生物学者も加え、緊密な共同研究を行おうという日本で始めての試みは、幸い成功し多くの成果をあげた。その一つは、実際にチンパンジ-の子殺しを観察してきたサル学者と、動物社会の比較研究を行ってきた昆虫学者、および生活史戦略、行動戦略のモデルを研究してきた数理生態学者による、サルの子殺しのモデル研究である。サルの子殺しはかって考えられたような異常心理でも,ともだおれを防ぐための密度低下策でもなく、ハレムを奪ったオスの適応戦略だとの理解がひろまりつつあるが、弱点は自分の子を殺されるメスがなぜ抵抗しないかであった。共同研究の結果は、早く子殺し雄の遺伝子をとりこむことによって孫の数を増やすことよりも、子殺しへの抵抗のコスト(抵抗により母親が傷つく)の方が重要であることを明らかにした。この成果は国際的進化学誌Evolutionで印刷中である。 この研究ではまた、鳥で発見された社会性昆虫類似の現象、ヘルパ-、兄弟殺し、集団求愛行動(1ek)などについて、両動物群を扱う学者と数理学者の共同討議が数多く行われ、両者の違いとともに、共通点も明らかとなり、一貫した理論構築への一歩が始まった。すなわち、どの分担者も包括適応度説の有効性を認めつつ、協同的多雌繁殖が重要な役割を果すことを認めた。これは生物社会進化論上重要な進歩である。またチンパンジ-とイワヒバリという全く異るグル-プでみられる乱婚の意義についても討議し、ほぼ意見がまとまった。これらの結果を一般化すべく、数学的モデルの完成にむけて、いま努力が行われている。なおこれらの仕事は、旅費を多く確保し、頻繁に出張・合宿することによってなされたことを付記する。 なお、3年間の研究成果は現在の時点で発表論文29点、印刷中の論文18点、発表準備中の論文13点以上にのぼった。
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