研究課題
総合研究(A)
昆虫の後期発生時における代謝調節は、変態時におけるライフスタイルの変化に巧妙に適応している。フエノールオキシターゼは多目的な酵素であり、脱皮後のクチクラの硬化着色に関与しているのみならず、異物認識、免疫にも重要な役割を果たしている。芦田は体液フエノールオキシダーゼの活性化系を解析し、プロテアーゼが重層したカスケード系であることを示した。山崎はクチクラに局在するラッカーゼ系酵素の動態とくにその活性化機構を明らかにした。大西は体液のフエノールオキシダーゼの活性化に伴うペプチドフラグメントの放出に関し、そのN末端がブロックされていることを見た。名取はニクバエの異物認識により誘導されるペプチドについて研究し、とくにザルコトキシンと呼ばれるペプチドとレクチンを解析した。これらのペプチドは、胚期・蛹期に合成されるのみならず、傷害によっても誘導される。富野はクチクラに局在するタンパク質を分離し、これらが蛹化脱皮時の極めて限られた時間に発現することを示した。茅野はエネルギーを急激に消費するバッタの飛翔時における代謝系、とくに脂質を輸送するリポフォリン系について研究し、アディポキネティックホルモンによる動的変化を試験管内で再構成することに成功した。山下はカイコの卵黄タンパクの一種である卵特異性タンパク(ESP)の動態を研究し、これがこのタンパク質に特異的なプロテアーゼで分解されることを示した。景山は同じカイコの卵を材料に、新しいタイプのチオールプロテアーゼを単離してその性状を調べた。高橋は環状グアニル酸依存性プロテインキナーゼを鈍化し、これがカイコの卵黄タンパクであるビテリンとその前駆体ビテロジエニンを燐酸化することを示した。以上の研究は昆虫という材料を有効に生かした研究で、今後の発展が期待される。
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