研究概要 |
1 蛹期における精子形成:エリサン, 天蚕および柞蚕のいづれの材料においても, 将来, 有核精子を形成する精母細胞の成熟分裂像と, 無核精子を形成する場合のそれとは異なっていること, また後者の精母細胞はレプトテン期を経過しないことが明らかとなり, 基礎細胞学における新知見が得られた. 柞蚕蛹の越冬適温は25℃で, 5℃では著しい雄性不妊化現象がみられ, 現在, 越冬期間中における蛹の温度感受性時期について検討中である. (勝野) 2 幼虫期における天蚕および柞蚕の精子形成:両種ともに5齢期間中, 精室上部に有糸分裂中の精原細胞およびピクノーシス細胞が常にみられ, 前者の細胞は次第に精母細胞へと分化が進み, 熟蚕期には成熟分裂期の精母細胞が精室底部にみられた. 両種の相反交雑の結果, 柞蚕×天蚕の場合は蛹態で, 天蚕×柞蚕の場合は蛹態のほか卵態で越冬するものがみられた. 現在, 越冬形態と精子形成時期との関係について検討中である. (田中) 3 天蚕の蛹期における卵形成:蛹期間は約30日で, 化蛹18〜20日目は卵管は急激な成長をし, 栄養細胞退化期および完成期の卵が急増した. これに対し他の時期における卵発育は比較的緩慢であった. なお, 成熟卵の卵長は約3mmで家蚕の約2.5倍, 初期球状期から完成卵までの卵成長率は家蚕に比べて3倍以上であった. 今後, 柞蚕休眠蛹における卵形成と, 天蚕におけるそれとを詳細に比較検討の予定である. (須貝) 4 走査電顕による天蚕胚頭部の形態形成の観察:産卵後1.5日目には, 上唇・大顋・小顋・下唇および触角の小突起がみられた. 2日目には上唇突起が融合し, 触角の突起は長形となった. 2.5日目は各突起は集合し大顋は大形となった. 3日目には頭部は1節に集合, 下唇突起は完全に融合, 小顋肢は著しく伸長した. 5〜6日目には頭部の形態形成はほぼ完了した. 現在, 天蚕起の胚子発育図譜作成を検討中である. (岩下)
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