研究概要 |
稚蚕用人工飼料はすでに広く普及しており, 技術的には一応の完成を見たといえよう. しかしながら壮蚕用飼料については未だ改良の余地が多く, 特に人工飼料育蚕においては摂取栄養分の繭層への配分比率が桑葉育蚕に比して低く, 飼料窒素の繭層への利用効率の向上が望まれている. そこで飼料組成の改良, 飼育方法の改善等の手法を用いて人工飼料中の窒素の利用率の向上を目的として実験を行い以下の結果を得た. 組成の異なる数種の人工飼料を用いて全齢人工飼料育を行い, 得られた繭成績を比較したところ, 飼料窒素の増給に伴ない, 繭生産量が増加した. なお飼料の蛋白量30%で繭層重が最大となった. 飼料効率を比較したところ, 体質造成に関する飼料効率は飼料蛋白量との相関は見られず飼料食下量の多少と高い正の相関が認められた. 繭層生産に関する飼料効率は飼料蛋白の多少並びに飼料蛋白の消化量の多少との間に正の相関が認められ, 高蛋白飼料ほど繭層生産効率は高かったが体重に関しては有意な相関を得る事は出来なかった. ビタミンB_6の給与量と成長および繭生産との関係を比較したところ, 飼料蛋白が多くなるほどB_6要求量が高り, 蛋白40〜50%の区ではB_610〜100μg/g飼料の区で成長が良く, 繭層量も多かった. 飼料効率とB_6量の関係を見ると, 体重に関しては相関は見られなかった. しかしながら, 繭層生産に関しては, 高蛋白飼料区においてB_6が多いほど繭層生産効率が高くなる傾向が認められた. 飼料組成と耐病性について検討したところ, 繭生産量が多く繭層が厚く耐病性の高い飼料組成を決定に致らなかった.
|