研究分担者 |
山下 興亜 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50023411)
大西 英爾 名古屋大学, 理学部, 教授 (60022521)
園部 治之 甲南大学, 理学部, 助教授 (20068133)
坂口 文吾 九州大学, 農学部, 教授 (30038161)
添田 栄一 理化学研究所, 分子腫瘍研究室, 研究員 (00039330)
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研究概要 |
家蚕卵は,変異株が多数保存されていること,休眠という胚発生の節目が存在することなどから,発生制御ないし形質発現追及のためのこの上ない材料となる. 本研究は,家蚕卵の卵形成の段階から初期発生,休眠,覚醒を対象として多角的な専門分野を組織し,発生における形質発現制御のポイントを探ることを目的としている. 初年度は,まず,簡便なcDNAとゲノミックライブラリーの作製法を確立した. また,家蚕の発生分子マーカーとして,特異的変動を示す酵素(アルカリホスハターゼ)並びに新発見の卵殻異常突然変異における特異コリオンタンパク質が適当であることを見いだした. 今後は,これらの技法・基見を結び付けることにより変異系と正常系でのmRNAの利用性を比較・追究することができるようになった. 一方,産卵後の休眠決定を支配する遺伝子として着目されてきたpnd^+の産物が初めて単離された. 同時に,休眠覚醒を支配する分子時計(酵素エステラーゼA_4)の天然の基質としてコレステロールが重要であることが明らかとなった. また,卵形成中に休眠性を決定する機構の一つとしてアデノシンデアミナーゼ活性が着目に値することも判明した. これらの成果により,カイコ卵の休眠支配機構の理解が一段と深まりつつある. さらにまた,これまで見出されていたカイコ卵中のfreeとconjugateタイプのエクジステロイドの構造を総て解明した. このタイプ交換こそが,カイコ発生・休眠に直接関与する重要な調節因子であろう. この変換に上記アルカリホスハターゼが働く可能性があり着目される. 一方,胚発生期にタンパク質合成のためのアミノ酸供給源として,主要卵黄タンパク質であるESPを限定分解するプロテアーゼの作用機構が判明し,作用の時期および化学量論的対応関係が解明された. この酵素は発生中のde novoの系によって合成されることを見いだし,この酵素自体が一つの発生マーカーとしても役立つことを明らかにした.
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