研究概要 |
日本における有桟溶剤中毒の発生状況, 有桟溶剤の使用と暴露の実態, 臨床所見の特徴などを明らかにするために, 調査用紙を作成し, 産業衛生学会有桟溶剤中毒研究会参加者, 有桟溶剤中毒事例を報告している臨床医, 特殊健康診断を行っている桟関, 労災病院などに配布して中毒症例を収集した. 現在までに60名の報告者から122例の症例がよせられた. これらの症例の調査項目をコード化してコンピューター集計用のデータベースの作成と単純集計を行った. 122例中業務起因性およびその疑いのある症例は98例であった. 中毒の種類は慢性中毒66例(67.3%), 亜急性中毒14例(14.3%), 急性中毒18例(18.4%)であった. 職種別では塗装22例(33.4%), 洗浄13(19.7%), 接着10例(15.1%)が多いものであった. 暴露された溶剤ではトルエン34(51.5%), キシレン19(28.8%), トリクロロエチレン17(25.8%), 酢酸エチル14(21.2%), nーヘキサン13(19.7%), メチルエチルケトン13(19.7%), メタノール12(18.2%), アセトン11(16.7%)などが多く含まれていた. 慢性中毒の臨床所見では中枢神経障害35(53.0%), 末梢神経障害27(40.9%), 脳神経・自律神経障害17(25.8%)など神経系の障害がもっとも多くみられた. 肝障害,腸管のう腫様気腫などの消化器障害も16(24.2%)例に認められた. 血液系障害は3(4.5%)例のみであった. 患者の職場環境では定期的な環境測定, 局排装置の設置は半数以上が行なっておらず, 有桟溶剤の特殊健康診断も大部分が受診していなかった. 現在さらに中毒症例の収集とその解析の準備を行っている.
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