研究概要 |
沖縄本島南部の粟国島における地域精神衛生活動は, 昭和53年から開始され, 佐々木を中心に進められている. 本研究は, 1)沖縄の文化的特殊性を踏まえて, 粟国島を含む沖縄における地域精神衛生活動の年次推移と住民の精神衛生状態を把握し精神障害の頻度, 社会適応, 受療状態を明らかにし, 併せて, 精神衛生の実践をとおして, 経時的に地域精神衛生活動の推移を捉え社会的要因との関連を合析する. 2)さらに, 東京都内, 埼玉県下の保健所の精神衛生活動と比較し, 地域特性が精神衛生活動にどの様な差異を生ずるのか. あるいは生じないのかを検討し, 考察することを目的としている. 実践をとおしての研究は, これまでに培われてきた活動のネットワークを保持, 拡張をはかりながら行なわれねばならない. したがって, 直ちに地域に入って調査を行うことはせず, これまでの活動の整理から着手することにした. 本年度は, 1)那覇保健所管轄の粟国島のこれまでの精神衛生活動資料の整理, 現地へ赴いての聞き取り調査による現状把握に勤め, たびたび訪沖した. また, 2)沖縄, 埼玉(秩父 大宮)東京(杉並・大田・八丈島)の3地域で精神衛生活動に従事している保健婦の参加を求め, 担当事例の事例検討会, すなわち, 63年1月15・16日の31名の参加による事例検討会をはじめとして, 1月20日, 2月4日, 8日, 3月2日, 5日の計6回の検討会を行なった. これらの検討を通じて, 各地域の精神衛生活動に地域特性の有無を検討すると共に, 現状を把握した. 次年度は本調査の予定であるが, 事例検討の蓄積と共に, 1)「地域の中で問題になる事例」に絞って検討をすすめる. 2)地域におけるケアのネットワーク, 住民の精神障害に対していかなる態度を持っているか, などの研究計画が討議された.
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