小児期高アンモニア血症の病因病態の解明と治療に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62304042
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 松田 一郎 熊本大学, 医学部, 教授 (10000986)
• 研究分担者: 森 正敬 熊本大学, 医学部, 教授 (40009650) ; 山下 文雄 久留米大学, 医学部, 教授 (20080723) ; 北川 照男 日本大学, 医学部, 教授 (50058765) ; 成澤 邦明 東北大学, 医学部, 教授 (90004647) ; 大柳 和彦 札幌医科大学, 助教授 (10045388)
• キーワード: 高アンモニア血症 / 尿素サイクル異常症 / 有機酸血症 / 尿素サイクル酵素のcDNA / ゲノムDNA / DNA診断

研究概要

1.全国臨床症例の集計と解析:昨年度の一次調査に続き、二次調査を行い、一部その解析を行った。尿素サイクル異常症91例、有機酸血症70例、一過性新生児高アンモニア血症17例である。尿素サイクル異常症中、最多のOTC欠損症の解析で得られた結果をみると約1/5の男子例でその発症年齢が16歳以上と高く、男性例はほとんどが乳児例であるとする従来の報告とは異っていることが判明した。女性例の解析結果と会せてかなり遺伝的異質性の強い疾患であることが示唆され、今後基礎研究班との対応を深め、DNA解析を進めれば貴重な情報が得られるもと思う。治療方法についてはL-カルチニン有用性を報告して以来、その使用が拡まりつつある。アルギニノコハク酸尿症の出生前診断についての検討も進んでおり、昨年1年間に2例の胎児が患者と診断され、中絶後確認されている。
2.高アンモニア血症の病態解明:新生児期の高アンモニア血症はアルギニン摂取量と関連していることが推定されている。今回それを明らかにするため、アルギニン/総タンパク質比を変えて未熟児に投与し、アルギニン添加が高アンモニア血症改善に有効なことを示した。また、初代肝細胞培養系を利用して高アンモニア血症時のアミノ酸転送系を研究し、オルニチン転送が特に有意に変動することを見出した。
3.基礎研究:(i)OTC欠損症についてのDNA解析が進められ、1例について第5クエソン内のTagIサイトの変異が、他の2例については第8クエソン内のアミノ酸配列を伴う1塩基置換が認められた。現在さらに別の症例について解析が進められている。(ii)アルギニノコハク酸尿症のDNA解析に必要な本酵素のcDNAが単離され、構造解析が行われ、本年度はこれを用いて症例解析が計画されている。(iii)わが国で新しく高アンモニア血症動物モデルが見つかり、現在その解析が進られている。これまで尿素サイクル全酵素の低下が認られている。

研究成果

• [文献書誌] S.Nakamura,;Y.Kondo,;T.Ogata,;K.Iribe,;Y.Kudo,;T.Ikeda,;I.Matsuda.: Acta Paediatr Jpn. 30. 692-695 (1988)
• [文献書誌] Y.Ohtani,;K.Ohtangai,;S.Yamanoto,;I.Matsuda.: The Journal of Pediatrics. 112. 409-414 (1988)
• [文献書誌] I.Matsuda,;A.Hata,;T.Matsuura,;T.Tsuzuki,;K.Shimada.: Clin Chim Acta.
• [文献書誌] A.Hata,;C.Setoyama,;K.Shimada,;E.Takeda,;Y.Kuroda,;I.Akaboshi,;I.Matsuda.: Human Genetics.
• [文献書誌] J.Morita,;Y.Ito,;M.Yoshino,;Y.Koga,;S.Yano,;I.Yoshida,;F.Yamashita.: J Inher Metab Dis. 11. (1988)
• [文献書誌] T.Matsumoto,;T.Kondoh,;M.Yoshimoto,;K.Fujieda,;N.Matsuura,;I.Matsuda,;T.Miike,;K.Yano,;A.Okuno,;Y.Aoki,;I.Murano,;S.Toyota,;S.Ohnishi,;N.Niikawa.: American Journal of Medical Genetics. 31. 603-616 (1988)
• [文献書誌] T.Matsumoto,;T.Kondoh,;T.Baba,;M.Yoshimoto,;N.Niikawa,;Y.Tsuji.: Acta Paediatrica Japonica.
• [文献書誌] T.Matsumoto,;T.Kondoh,;T.Kamei,;M.Yoshimoto,;Y.Tsuji,;K.Suzumori,;N.Iwatani,;N.Niikawa.: European Journal of Pediatrics.
• [文献書誌] T.Kamei,;J.Hamabe,;T.Matsumoto,;K.Abe,;N.Harada,;S.Ishikiriyama,;T.Hasegawa,;K.Miyazaki,;S.Mizuno,;K.Narahara,;S.Yukizane,;N.Niikawa.: Japanese Journal of Human Genetics.