研究概要 |
1.哺乳床の早期装用による哺乳障害の改善について:哺乳床装用後早期と哺乳速度が有意に増加し,哺乳時間の短縮が可能で,その状態は装用期間を通じて持續し,全身発育に有用であった(栗田・河合ら). 哺乳時における乳首内陰圧および陽圧を電気信号に変換し,さらに乳首内陰圧より吸啜圧を求めるシステムを開発し,哺乳床の装用前後における圧を測定した. その結果,哺乳床非装用時には患児は正常児に比してかなり異なった乳首内圧波形を示し,乳首内陰圧・陽圧・吸啜圧は明らかに小さい. 一方,哺乳床装用時には正常児に近づく傾向を示し,哺乳障害の大きな改善が認められ,また,生後1ヵ月未満に装用した群で改善度が大きく,早期装用の有用性が示された(高野・高橋). 2.哺乳床の早期装用と2段階手術との組合せによる顎発育への効果について:生後可及的に早期に哺乳床を装用し,1才6か月時に軟口蓋のみ閉鎖した2段階手術群と哺乳床は用いず,手術も從来の1段階法で行った群との経年的な顎模型による顎発育を比較した. その結果,早期の哺乳床の装用により破裂側の歯槽部の前・外方への発育が著明で,良好な歯槽形態が得られた. 歯列幅径の計測では1段階にみられた犬歯・第1乳臼歯部の著明な狭窄がなく,2段階群では正常児の幅径と差を認めなかった. 歯列弓も正常児に類似した良好な形態を示し,1段階群に多い鞍状歯列弓を示すものはみられなかった. 4歳時の咬合では正常咬合例が多かった(大橋ら). 3.哺乳床は用いず2段階法のみ行った例の顎発育について:手術のみを2段階で行った片側破裂群と両側破裂群の各々について経年的に6才まで追跡した. その結果,片側唇顎口蓋裂群では從来の1段階手術群に比較して良好な顎発育が得られたが,両側例では1段階手術群との間に明らかな差がなく,両側性唇顎口蓋裂への哺乳床を装用しない2段階手術の効果は明らかでなかった(和田ら).
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