研究概要 |
本研究は昭和53年度以降動物実験に伴う腎症候性出血熱(HFRS)発生の予防制圧を究極の目標とする一連の班研究の最終段階の任務を担うものである. 中井はHFRSウイルスの基本構造を電顕像により解析しHantiaan(HV)株はエンベロープを有する110nmの球状粒子で,その表面は格子様構造を呈する,ラット由来のBー1他2株は大小2つの球状粒子で尾部を有する粒子が観察され, 媒介動物を異にするHFRSウイルス各型の形態学的異同を明らかにした. 山西はHV76ー118株感染マウスの脾細胞をウイルス感染膜腔マクロファージを標的細胞として共に培養し,ウイルス特異的な細胞障害性Tリンパ球(CTL)活性を証明し,HV及びBー1株によって誘導されたCTL活性は互いに株間交叉反応性を示しHVはBー1に比し高い活性を誘導し,感染マウスからのHFRSウイルス排除にCTLが重要な役割を担っていることを証明した. 堂前はBー1株感染ラット脳・肺材料を12代継代接種しrecipient血清中に高い抗体上昇を認め,感染後2年半を経過した個体の脳・肺からウイルスの分離に成功し,回復患者血清が長期に渡って中等度抗体を持続することと併せてHFRSウイルスの生体内長期残存の可能性を明らかにした. 浜田は昭和56年から62年に至る間の購入SPFラットに13.5%の低IFA抗体陽性個体を証明し実験ラットの安全性確保のためその意義解明の必要性を強調している. 高田は港湾及び近傍地区の補獲ラット血清検査を行い逐年生息ラット減少の傾向が認められるがドブネズミ,クマネズミにそれぞれ15.5%,10%に陽性を認め前者に4096倍の高陽性例の存在を報告している. 発症例 126,発症機関22を数えた動物実験に伴う本症は昭和59年末以来発症が停止し,これはウイルス分離,検査体制の確立,本症に対する実験者の認識の徹低等実験動物の品質の吟味,動物実験環境の改善について本研究班の成果が上ったものと考えられる.
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