研究概要 |
高齢者のための居住環境づくりについて,総合的に検討を加えることを目的として,気候風土的特色をもつ北海道から九州までの10地域に居住する高齢男女3260名を対象に,日常の生活空間や行動様式,室内環境の実態について夏季及び冬季にアンケート調査を実施し,加齢による共通的特性と環境要因からくる特異性を明らかにしようと試みた. 本年度は夏季の分のみ分析を行った. その結果,対象者の年令分布は男女とも65ー74才に50%強のため,女性が若い層にやや多い. 約半数が子供又はその家族と同居しているが,夫婦2人暮しは男性40%に対し女性24%と少く,逆に1人暮しが17%(男性3%)と多い. 加齢によりその値又は割合が増加するものは, 1階での就寝,夜間のトイレ回数,睡眠時間などであり,逆に減少するものには,身長,体重,外出頻度,入浴回数,冷房器具の使用率などがある. また, 着衣や健康のための身体運動にも加齢の影響が認められ,高齢層に長袖,就寝時のゆかた着用が多く,若齢層にパジャマ・ネグリジェが多い. ゲートボールとジョギングについても同様の傾向が認められる. 加齢とともに身体機能の衰えが明隙に表われているが,暑さに対する低抗力は強いとするものが高齢層に夛い. 地方差については,概して東北,北海道居住者は小ぶとり傾向があり,高血圧,神経痛,夜間のトイレ回数,寝具の重ね着が夛く,気温の影響が大きい. 逆に九州ではスポーツが盛んであり,入浴回数も夛く,クーラー使用率も高い. また,都市では2階就寝率が高く,クーラー使用による疲れ,だるさを訴える割合が高い. 農村では肩,腕などの関節の痛みなど農作業との関わりからくる症状が認められる. 以上より,温熱環境条件は,種々な点で高齢者の生活空間や行動様式に影響していることが〓われる. 今後は冬季の結果と合せて更に分析検討を加えていく.
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