鍼灸刺激の生体反応に関する実験医学的研究

1987 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62304069
• 研究機関: 関西鍼灸短期大学
• 研究代表者: 川俣 順一 関西鍼灸短期大学, 教授 (20029747)
• 研究分担者: 熊澤 孝朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (20022775) ; 渡 仲三 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (40079976) ; 笠原 多嘉子 昭和大学, 医学部, 助教授 (30112717) ; 武重 千冬 昭和大学, 医学部, 教授 (30053763) ; 木村 通郎 関西鍼灸短期大学, 教授 (50111745)
• キーワード: 鍼灸 / 施灸 / 経穴 / 内因性オピオイド / 肥満細胞 / 脱顆粒

研究概要

研究成果:坂本(その後笠原に変更)は施灸マウス皮膚では艾柱重量に比例した肥満細胞脱顆粒が見られ, 抗ヒスタミン薬投与により抑制される傾向がみとめられた. さらにマウスのATP放出が施灸で増大することが認められた. また,施灸によるマウスの血清生化学成分の変動について研究をすすめている. 態沢は鍼灸の治療効果の発現に当たりその末梢入力は全身に分布するボリモーダル受容器が重要でありその中枢機序としては, 内因性オピオイド系を含む神経体液性機序について実験した. その結果, 1)ポリモーダル受容器の単一神経放電を指標にして調べた結果, その興奮が炎症組織で出現する際, プロスタグランジンEa, la, セロトニンなどにより増強することを明らかにした. これは鍼灸刺激局所に炎症様状態が出現するという所見から見て興味ある結果であろう. 2)また, ネコを用いた実験で, 筋細径求心性入力による呼吸抑制にもハリ鎮痛において認められているものと類似の機序が関与している可法性を強く示唆するものである. 渡は経穴を解剖学的に研究した. ヒト, ウサギ, モルモットを用い, 経穴部位の直下の皮下組織内に横走する神経突起があり, その周りに多数の小血菅の断面が認められることが多い. またそこには, 非経穴部位に比し神経・血菅の多いことを証明した. 木村, 川俣は施灸局所皮膚と所属リンパ節における免疫担当細胞の動態を研究し, 肥満細胞とT細胞が施灸後3日項の真皮と所属リンパ節に多数観察した. これは免疫反応の惹起を示唆するものである. 武重は経穴, 非経穴での鎮痛発現経路について誘発電位の記録, 脳の局所破壊, 局所刺激により調べた. 今後の研究:今年度に引続き, さらに鍼灸の臨床研究者と協力組織を作り, 今や世界的に関心と研究が高まりつつある鍼灸に関する科学的な裏付けが確立されるようにしたい.

研究成果

• [文献書誌] 會澤重勝;岡崎雅子;坂本浩二: 昭和医誌.
• [文献書誌] 岡崎雅子;山内真由美;坂本浩二;會澤重勝: 全鍼灸誌.
• [文献書誌] 坂本浩二;笠原多嘉子;桜井淑子: 全鍼灸誌.
• [文献書誌] 武重千冬: 麻酔. 36. 1498-1505 (1987)
• [文献書誌] 田中正明;五十嵐治;久光正;武重千冬: 昭和医学会雑誌. 47. 539-545 (1987)
• [文献書誌] 武重千冬: 日本生理誌. 49. 83-105 (1987)
• [文献書誌] Kumazawa,T.;Mizumura,K.;Sato,J.: J.Neurophysiol.57. 702-711 (1987)
• [文献書誌] Kumazawa,T.;Mizumura,K.;Sato,J.: Pain. 28. 255-264 (1987)
• [文献書誌] Mizumura,K.;Sato,J.;Kumazawa,T.: Pflugers Arch.408. 565-572 (1987)
• [文献書誌] Kozaki,Y.;Simbulan,D.;Tadaki,E.;Kumazawa,T.: Environ.Med.31. 53-60 (1987)
• [文献書誌] 熊澤孝朗: 環研年報. 39. (1988)
• [文献書誌] 渡仲三: ミクロスコピア. 4(3). 119-124 (1987)
• [文献書誌] 山下九三夫;渡仲三: 東洋医学とペインクリニック. 17(2). 55-60 (1987)
• [文献書誌] Watari,N.;Mabuchi,Y.;Hotta,Y.;Kurono,Y.;Yamashita,K.: Complication of the abstracts of acupuncture and moxibustion Papers(1st World Conference on acupuncture and moxibustion,Nov.22-26,1987,Beijing). 150-151 (1987)
• [文献書誌] Kimura,M.;Tohya,K.;Toda,S.: Anat.Anz.165. 143-150 (1988)
• [文献書誌] Mastrogiovanne,M.J.;Kimura,M.: The Journal of Chinese Medicine. 26. 23-25 (1988)
• [文献書誌] Kimura,M.;Mastrogiovanni,F.J.;Toda,S.;Kuroiwa,Tohya,K.;Sugata,R.;Ohnishi,M.: The American Journal of Chinese Medicine. (1988)
• [文献書誌] Kimura,M.;Tohya,K.;Kuroiwa,K.: Anatomical Record. (1988)
• [文献書誌] Kimura,M.;Tohya,K.: Acta Anatomica.
• [文献書誌] 田中正明;佐藤孝雄;岡本太郎;武重千冬: 昭和医学会雑誌. 47. 159-166 (1987)
• [文献書誌] 菱田不美;岡本太郎;武重千冬: 昭和医学会雑誌. 47. 153-158 (1987)
• [文献書誌] 桑沢二郎;佐藤三千雄;武重千冬: 昭和医学会雑誌. 47. 81-87 (1987)
• [文献書誌] 武重千冬: "東洋医学の時代-針灸のなぞに挑む(第4章 痛みと針灸-生理学からみた針の鎮痛発現機序)" 東京書籍, 113-146 (1987)
• [文献書誌] Kumazawa,T.;Mizumura,K.;Sato,J.: "Modulations of testicular polymodal receptor activity:Implication of receptors in inflammatory pain.in:Fine Afferent Nerve Fibers and Pain." VCH Verlagsqesellschaft mbH, 9 (1987)
• [文献書誌] 熊澤孝朗: "臨床薬物治療学大系:6, 麻酔・蘇生・鎮痛・中毒"疼痛の生理(伝導路)"" 情報開発研究所, 14 (1987)
• [文献書誌] 山下九三夫;渡仲三;馬渕良生;豊田勝良;堀田康明: "厚生省特定疾患スモン調査研究班研究報告書" 新東洋医学総合研究所, 387-390 (1987)