研究概要 |
この分野は最近の遺伝子工学・細胞工学の技術的発展により新展開を見せつゝある. 脳神経系の形態形成・神経回路の形成などの分子生物機構が明らかにされつつあり, また学習・体内時計などの中枢高次機能にも分子生物学的成果が応用され始めている. 本研究ではこの分野の発展と現状を各班員の専門分野について調査し, 研究代表者のもとで集約した. その結果, (1)分子レベルの研究は発生分化や脳の高次機能と結びついてはじめてその真価が発揮されること, (2)したがって, これまでの形態・生理を中心とした研究と分子レベルの発展との有機的接続が重要, (3)そのため, マウス・魚・ショウジョウバエ・線虫などの遺伝学・発生生物学と従来の技術を併用できる材料の応用が重要, (4)しかし従来の哺乳類中心の研究と無脊椎動物中心の分子レベルの研究の接点が重要, (5)これらの研究者は多分の学際的分野・学会に分散しており, それらを結集する研究組織が大切であるなどの点が明らかとなった. しかし, 本研究と同時期に関連するテーマの研究グループ(例えば重点領域として, 「運動系の分子生物機構」・「神経回路網形成の分子機構」・「細胞膜調節」・「ショウジョウバエ」など)が発足ないし内定してきた. また, 次年度の申請にも「脳神経細胞におけるインパルスシグナル機構」をはじめいくつかの関連テーマが企画されていることを考え, 新たに研究計画をたてて計画の乱立を招くより, これらの計画の推進をサポートすべきだとの結論に達した. これらの既存の計画やスタートしようとする研究が「分子生物」を名乗ることが採択をされるための方便にすぎないということのないよう, これからも協力していくこととした.
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