本研究は、産業構造の変化による労働形態・労働時間・研修などが変化し、それによって、共働き世帯の養育がどのような影響を受けているかについて、実態調査を通して検討しようとしたものである。 本調査の結果、第1の特徴は、新たな専門的・技術的職業の発生と、それらのなかに、パ-トや契約社員など、非正規雇用者が増加していることである。それらの就業者は、従来からの専門職である医師、弁護士などとともに、労働時間が長く、更に自己研修時間の必要度が高いことも加わって、保育時間とのミス・マッチが目立っている。 第2の特徴は、昼間の保育については、公的制度が普及しており、保育所利用者が多い。しかし、公的保育制度の下にある保育時間と仕事の時間とのミス・マッチは、二重保育を拡大しており、親族の援助が得られないものは、ベビ-・ホテルやベビ-シッタ-を利用している。この二重保育の選択に当っては、親の経費負担能力が主要な要因として働いている。 第3の特徴は、日本とアメリカの保育費を比較すると、日本では、公的保育を利用している範囲では、家計収入の約5〜6%位にとどまっているが、二重保育料を含めると、その負担は、15%前後のものが多いが最高50%に達するものも見られ、アメリカのような保育制度(公的な)の完備していない国とほゞ同率となっている。 本研究の考察としては、今日の保育制度は、労働時間の多様化・労働の質的変化にもかかわらず、保育時間が対応できていないために、二重保育が拡大し、一般化しているとさえいえる。しかも、二重保育については、親の経済力によって、購入可能な保育の質・量が異なっており、家計負担の問題だけではなく、児童の発達保障の上からも、保育制度の検討が必要である。今後、母子家庭の保育から、この問題の研究をする。
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