1.本研究は、産業構造の変化・「雇用機会均等法」による女子労働の新しい職種の出現・労働形態・労働時間・研修の在り方の変化などから、それにともなう育児の諸問題の実態を明らかにしようとしたものである。 2.調査の結果、新たな専門的技術的職業の発生、それらの職業に多くのパ-トや契約社員といった非正規雇用者が増加しており、彼らの労働時間は流動的で、長時間化する傾向にある。それらの職業は医師・弁護士・教師など従来からの専門的職業を含めて、自己研修が職業維持にとって、重要な要素であり、就業確保の要因であることも見逃せない。こうした状況は、従来の昼間を主体とする保育所の保育時間では、母親の仕事や研修を保障できない状況が浮き彫りにされた。 3.女性の労働時間と保育時間との齟齬は、多くの女子労働者に補足的保育(二重保育)を強いることになっており、この二重保育の態様は親の経済的負担能力によって、購入可能な保育の質と量が異なっており、子どもの発達・平等な教育の点から、今後の大きな問題である。 4.こうした保育をアメリカのそれと比較すると、日本では、昼間の公的制度が普及しているので、それを利用していれば、保育料が家計費に占める割合は5〜6%であるが、二重保育料を加算すると15〜50%となり、法的保育制度の確立していないアメリカの実態調査の家計費に占める割合(約15〜20%)とほぼ同じである。 5.本調査を終わって、女子労働が更に拡大し、戦力化がすすむなかでの育児の問題が一層重要になっている。今後の課題として、乳幼児の平等な教育・発達の保障には公的保育制度及び措置制度の拡充に向けて、養育制度全体の再検討が必要であり、残された課題の方が多く、今後もこの研究を継続し、深めて行きたい。
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