研究概要 |
造岩鉱物や硫化鉱物は広く固溶体を形成し, 固溶体の物性や原子的スケールのミクロ構造は, 鉱物の熱・圧力履歴を反映し, 固溶体の結晶化学や熱・圧力履歴の解明に重要な手懸りを与える. 本研究は, X線分光法による解析を駆使し, 上記固溶体の結晶化学を, 固溶している各種元素の周囲の局所構造の詳細から明らかにする. (1)X線吸収端近傍のスペクトルにみられる微細構造(EXAFS法)の測定実験法, 特に高温での測定用として, 試料をチッ化ボロンあるいはアルミナ粉末と混合し, ペレット状に成形して測定する方法を開発し成果を収めた. 高温で還元され易い試料では, アルミナ粉末と混合すると特に有効である. また高温測定用の炉を試作した. (2)EXAFS解析法は, 大型計算機およびマイクロコンピューターでもデータ処理が行えるよう整備した. (3)三二酸化ビスマスと三価の希土類金属(ガドリニウム)酸化物との固溶体のビスマスおよびガドリニウムの局所構造の変化と固溶量との関係を明らかにした. その結果, ホタル石型固溶体の熱履歴の違いによる安定性は, 局所構造の違いにより説明できる. 設備備品のプリセッションおよびワイセンべルグカメラは, 試料の同定に使用した. (4)マグネシウム, 鉄系にかんらん石の鉄吸収端スペクトルの再測定を行った. 種々の鉄固溶量の固溶示局所構造の解析から, 鉄の局所構造は, 固溶量にほとんど依存しないことを明らかにした. (5)硫化鉱物キューバ鉱の高温形および低温形, オウドウ鉱の鉄, 銅の吸収端スペクトルの解析を行い, 高温形の鉄, 銅の無秩序配列状態の結晶構造においても, それぞれの局所構造は, 秩序配列状態の結晶構造と等しいことを明からにした.
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