本研究では、主に二種類の機械システムを取り扱った。以下その二つについて報告をまとめる。 (1)知能移動機械システム……四足歩行ロボットを作製し、歩行移動を行わせた。歩行についてはパラメ-タが非常に多く、制御に際してどのような歩き方が良い歩き方であるかの評価基準さえあいまいであった。そこで、実際の動物(主に犬を対象とした)の歩行解析を詳しく行い、ひとつの指標は消費エネルギであることが見出された。すなわち、歩容(歩き方--どの足をどの順序で踏み出すか)、着地率(一本の足について、全時間の内着地している比率)などが消費エネルギ最小という評価基準で定まっていることが実際の観測結果とモデルの力学解析結果の一致という事実により確認された。このような知識に基づいてロボットを制御することにより、安定な四足動歩行が実現されたのである。 (2)知能ロボット用ソフトウェア……実世界で作業を行うロボットに問題解決能力と学習機能を合わせ持たせることを試みて成功した。問題解決とは行動計画の生成であり、その実行も含む。また、学習とは問題解決に必要な知識の獲得のことである。実世界で作業を行うロボットには大きく分けて二つの問題が存在する。ひとつは動作(あるいは環境の変化)の不確かさであり、もうひとつは、作業対象や環境に関する知識の不十分さである。前者には、予測されなかった未知の状況に対処する問題解決機能が必要となり、後者に対しては学習機能が必要なのである。これらは個々に研究されることはあったが、本研究のように統合的に扱うものはなく、その成果は内外で高い評価を受けた。
|