研究概要 |
平成2年度は前年度までに行った,インテグレ-テッド・アンテナの給電機構と放射特性の検討,時間領域測定法の開発,移動通信における多重波抑圧の検討について更に研究を進めるとともにその取りまとめを行った。以下に具体的内容を述べる。 1.インテグレ-テッド・アンテナは放射素子をモノリシック集積回路に組み込むことを目指したものであり,放射素子とアクティブ回路等を含む給電系が多層に構成される。本年度はスロットを介して給電されるダイポ-ルの共振特性,整合特性についてフ-リエ変換モ-メント法を用いて解析した。その結果,上記給電系において問題となるparallelplat waveguide modeの発生を低く抑える給電の条件を明確にした。 2.電磁波の測定において時間領域測定法は有効な計測技術である。しかし,FFTを用いた従来の手法は時間領域において高い分解能を得るには広い周波数帯域に渡るデ-タを必要とし,アンテナのような狭帯域な測定には不都合である。本研究グル-プではMUSICアルゴリズムと呼ばれる手法により高分解能な時間領域測定を行うことを提案している。本年度は,アンテナの利得・パタン測定の際に問題となる不要反射波の抑圧に上記アルゴリズムを適用し,FFTの約1/15の周波数帯域で所要の測定が可能であることを実験的に示した。更に,電磁波散乱の解析に応用し,各散乱モ-ドを高分解能で分離できることを示した。 3.高速ディジタル移動通信においては多重波伝搬による周波数選択性フェ-ジングのため著しい特性劣化を生ずる。本研究グル-プではアダプティブアンテナを用いた空間領域処理により多重波を抑圧することを提案している。本年度はアダプティブアンテナに必要な参照信号の発生法およびダイバ-シチ技術を併用した高機能処理技術について計算機シミュレ-ションにより動作の確認を行った。
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