前年度までに作成した建築形態記述言語システム(CONSTRUCTORーII)を用いて、建築設計においてもとくにディテ-ルの記述が煩雑な小屋組の記述を行う実験を繰り返し、設計者にとっての「わかりやすさ」「使いやすさ」の検証を行った。 その結果、建築形態記述言語システムが持つべき基本条件を備えていることを確認した。しかし、実際の設計では、設計者間で正確で完全な記述をしていなくとも、他者に誤りなく形態情報が伝達しており、設計者としても、この人間どうしの伝達性を前提とした不完全な記述を利用していることが判明した。とくに、(1)設計者がとくに指定しなくとも、設計されるべき建築が架構性をもった建築形態として理解されること、(2)設計者の曖昧で不完全な記述でも、他者が類推して設計者の意図した建築形態情報を持ちうることが分かった。 前者の問題に対応するため、コンピュ-タ内で、設計者の記述から架構性を満足する建築形態として理解し形態情報を決定してゆく方法を提案し、これを具体的なシステムとしてコンピュ-タ上に作成した。また、後者の問題に対応するため、設計者の不完全な記述から完全な建築形態情報を生成する相関類推法を提案し、コンピュ-タ上で動作可能なシステムを作成した。 このふたつのシステムを建築形態記述言語システムの補助システムとして作動させることで、実用的な建築形態の記述が設計者のイメ-ジに適合した形で可能となることを示した。
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